『逆境経営』

逆境経営―――山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法

逆境経営―――山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法

 日本酒の中ではかなり好きな銘柄である『獺祭』を造っている旭酒造の桜井社長が書いた本がありましたので読んでみました。桜井社長は先代(父親)から蔵を引き継いだものの、日本酒の市場は年々その規模が縮小しており、更には自分の蔵で永年仕込みを担当してきた杜氏にも去られてしまう等々、逆境どころがいつ倒産してもおかしくない状態にありました。しかし、そんな厳しい状況の中でも問題点を冷静に分析し、時には「日本酒業界としては非常識」という方法で数々の困難を乗り越えてきました。このあたりはソニーの盛田氏やホンダの本田宗一郎氏の草創期のエピソードに通じるものがあると感じました。
 そういった意味で、桜井社長はNHKの『プロフェッショナル』やテレビ東京の『カンブリア宮殿』に取り上げられそうな人物だなあと思い、調べてみたら先月半ばに放送された『カンブリア宮殿』に出たのだそうです。見逃してしまいたいへん残念。YouTubeで動画を探してみようと思います。

 通常、日本酒の仕込みは年1回冬場に行うもので、杜氏は普段は農業をしていて冬の農閑期の手があく頃に酒蔵にやってくるという人的な要因と、仕込みに適した温度が冬場であるという環境要因から「年1回冬場仕込みシステム」になっていました。しかし、獺祭の旭酒造では杜氏に頼らずに社員が仕込み技術を習得し、更には適切な温度管理が出来る設備を導入することにより年間を通じてお酒を造れるようになりました。よって従来の方式に比べるとかなり多くの数量を生産できるわけですが、人気も高いのでなかなか手に入らなくなってしまったのは消費者としては誠に残念。デパートなどでは「お一人様1本まで」と書かれた紙が売場に貼ってありますし、入荷したと思ったらすぐに売り切れてしまうのが現状です。獺祭というお酒の人気が高まっていくのは喜ばしいことなのですが、入手困難ではどうしようもなく、なんとも痛し痒しです。