講演

 土曜日に大阪で聴いたのは青山繁晴氏の講演でした。この人の講演を聴くのは今年の2月(東京)、4月(京都)に続いて3回目。青山氏はつい先日、参議院選挙への出馬を表明したばかりですので、この講演において公職選挙法に抵触する類の発言は一切しませんとの断りが冒頭にありました。その後、青山氏による昨今の国内・世界の情勢に関する解説が1時間ちょっとありました。まずはじめは、当然のことながらイギリスのEU離脱の件でした。いろんな人の様々な思惑が絡み合っているように見えるけど、実際はキャメロンというたった一人の人間の欲望のために国民投票という誤った道を選択し、これがイギリスの崩壊の始まりだとのこと。ただこの時点ではスコットランドがUKから独立するとか、ロンドンが独立してEUに加盟するといった話には触れませんでした。いずれにしろ、良い方向へは向かいそうにはありません。
 その後15分程の休憩を挟んで、会場からの質問に青山氏が答えるという質問タイムが3時間ほどあり、いつものようにトータルで4時間半という長丁場の講演会でしたが、知的好奇心が刺激される楽しい時間でした。
 その質問タイムで最初に出た質問は拉致問題に関するものでした。質問者の1分ほどの質問に対し、青山氏は1時間ほどかけて説明していました(さすがにその後の質問には手短に答えるようにしてましたが)。その質問に対する答えの中で、何故拉致問題が解決しないのかについても言及していました。ここで話は中東情勢に飛びます。過激派組織ISを抑え込みたいアメリカですが、オバマ大統領は「もうアメリカの若者を戦争で死なせない」と約束して大統領になった人だし、ノーベル平和賞までもらっちゃったのでイラク陸上部隊を送ることは出来ません。仕方がないのでどこか他の国の軍隊にお願いするしかないのですが、あの地域でまともな軍隊を持っているのはイランしかありません。イランとアメリカは仲が悪く、イランの核開発を禁止し、経済制裁も加えてきました。しかし、ことここに至っては仲が悪いとか言っている場合ではありません。背に腹はかえられず、イラン軍(イラン革命防衛隊)にISを攻撃するよう依頼しました。イラン側は、その依頼を受けるけど、その代わりに核開発の再開を要求し、承諾されました(経済制裁も解除されました)。これを知った北朝鮮は「うちにはこんなにいろんな核兵器がありまっせ!」という商売上の宣伝の意味で、ミサイルを打ち上げたりするようになり、実際にイランから北朝鮮へ既に日本円で数兆円以上が支払われたと言われています。イランが核を持つと、イランと敵対関係にあるサウジアラビアが青くなって急いで自国も核武装することになり、北朝鮮はサウジも相手に商売が出来るようになりました。こうなると北朝鮮としては、拉致被害者という外交カードを使って日本から金を引き出すことをやらなくても充分な資金が懐に入ってくるので、拉致被害者の調査を一方的に終了させてしまいました。日本としてはどう出ればよいのか、相当難しくなりました。表向きには「全力をあげて拉致問題に取り組む」みたいなことを政府は言ってますが、拉致問題は政治家にとっては票にならないし、役人にとっても出世につながるものではないので、やろうとしている人がほとんどいない。しかも、拉致問題対策本部という組織が問題に取り組んでいるかのように見えますが、実際には外務省が情報を抱え込んで外へ出さないので、組織として機能していない。北朝鮮側は、いますぐに日本政府と交渉するつもりは無いけど、拉致被害者が死んでしまっては外交カードとして使えないので、死ぬ直前ぐらいになって交渉を再開させようという腹づもりらしいのですが、日本政府側はむしろ死ぬのを待っているのが現状なのだそうです。そうなればもう何もしなくてもよくなるから。なんともひどい話です。