店長

 月に1回ぐらいのペースで美容院へ行きます。そこは店長とアシスタントの計2人の店で、店長がカットしてくれるわけですが、この際に色々と世間話的な会話をします。そういう中で私がマラソンをやっていることを話し、店長もマラソンに興味を持ち始めたのか、1年ほど前からフルマラソンに出場するようになりました。私としても身近に同じ趣味の人が出来て嬉しく思いましたし、カットしてもらいながらトレーニング方法等について話すのも楽しく感じていました。
しかし、この店長は、私よりもいくらか若くて、学生時代にはサッカーをやっていたらしくもともとスポーツは得意だったこともあるのか、フルマラソンのタイムは私などよりもずっと良いのでありました。私は心の狭い人間ではないので「そうですか。すごいタイムですね。」などと褒める言葉を並べたりしているのですが、内心はあまり良い気はしません。でもまあ、私よりもタイムの良いランナーは世の中にたくさんいるわけですから、ひどく嫌な気持ちになるわけではありません。ここまではまあ良いのですが、年末にカットしてもらいに行った際に元旦マラソンに出場するという話をしたのですが、当日にマラソン会場へ行ってスタートの合図とともに走りだして暫くすると沿道から私の名前を呼ぶ声がしたので誰だろうと思って見ると店長がこちらに手を振っていました。応援は嬉しく感じたものの、正直なところ、決して速くない私の走りを見られたことは少し恥ずかしい気もしました。もしかしたら、この店長は私が出場した大会のサイトにアクセスして私がどれぐらいのタイムでゴールしたかをチェックしているのではないかと勘ぐってしまったりして、何だかもうあの美容院へは行きたくないなという気持ちが徐々に強くなってきました。でも新しい美容院を探すのって面倒だしなぁ。どうしようかなぁ。