アニサキス

 先日、うちの会社の産業医との会議の中でウイルスや細菌、それによって起こる食中毒関連の話が出ました。1年の中で最も発生件数が多いのはノロウイルスによるものですが、今の時期に多いのがアニサキスという寄生虫によって起こる食中毒なのだそうです。アニサキスは魚に寄生していて、それを人間が食べて胃の中に入ると、胃壁の中に潜り込んでしまい、その際に痛みが伴います。寄生するのはカツオ、イカスルメイカ)、サバが多く、通常はこれらの魚の内臓に寄生していますが、魚が死んだりすると内臓から筋肉へ移動するのだそうです。従って、魚を獲ったら素早く内臓を取り除く必要がありますが、釣りをして自分で獲った魚でもない限りなかなかそういう処理は出来ません。ただ、生き物ですから加熱すれば死ぬので、火を通せば心配ありません。アニサキスは魚の肉の表面に付いていることが多いので、カツオでしたら刺身ではなく表面を炙るタタキにする方が良いです。また、イカの場合は包丁で細長く切ってイカそうめんにすれば、アニサキスも切断されてしまうので問題ありません。カツオのタタキもイカそうめんも、美味しさやバリエーションを追求して生まれたわけではなく、寄生虫を殺すための料理法だったとは知りませんでした。

 しかし、サバの場合は生か生に近い状態でありながらアニサキスを死滅させる調理法が無いので、食中毒の発生件数がカツオやイカよりも多いようです。うちの会社の産業医はこれまでに7〜8回もアニサキスにあたったことがあり、大抵がサバだったと言っていました。医者なのに大丈夫かよ、と思ったのですが、アニサキスの場合は重篤な症状が出ることは滅多に無くて、胃に不快感があって食欲が減退するとか、何だか胃の調子がちょっと変だな、ぐらいの症状がほとんどで、自覚症状が無くて気が付かないこともあり、医者ゆえにそういうことは知っているので、その程度のリスクを恐れるよりは、目の前の美味しそうなサバの刺身を食べたい、という気持ちの方が勝るのだそうです。とは言え、抵抗力が弱い子供や高齢者は勿論のこと、夏バテで体力が落ちる季節にアニサキスが体内に入ってしまうと重い症状になりかねませんので、魚を食べる際にはしっかりと火を通すなど、注意したいものです。