タバコのニオイ

 私はタバコを吸ったことはありませんし、タバコの煙とかニオイは好きではないので、カフェやレストラン等では禁煙席を選びます。社会の流れが禁煙や分煙へ進んでいるので、昔に比べればタバコの煙やニオイに接する場面は格段に少なくなったのは事実です。そんな状況では、たまにタバコの煙やニオイが満ちた空間に出くわすと、かえって強烈に感じてしまいます。

 ただ、ひと口に「タバコのニオイ」と言っても、いくつかの種類があることに気が付きました。最悪なタバコのニオイは、パチンコ屋の前を通り掛った時に自動ドアが開いて、店内からタバコの煙を含んだ汚れた空気がモアッと出てきた時です。ギャンブルをしている時の「儲けてやろう」とか「うまくいかなくてイライラする」というネガティブな心理状態にある人間の体からは他の状況には無い成分が吐く息の中に滲み出ているので、独特のニオイになるのではないかと思ってしまいます。

 しかし、居酒屋の前を通り掛った時に店内から漂ってくるタバコのニオイは、さほど嫌いではないことがあります。酒を飲んでリラックスしている人の吐く息にはパチンコ屋の客の息のような成分が含まれていないからなのかもしれません。しかし、よくよく思い返して見ると、私が大学生だった頃、周りの友人の多くが喫煙者で、居酒屋では勿論、授業の合間の休憩時間や、友人の下宿の部屋に集まって過ごしている時には常にタバコの煙がモウモウとしていました。その時の楽しい記憶が、同じようなタバコのニオイによって呼び覚まされて、懐かしい気持ちが湧き上がってくるのかもしれません。あの頃の友人達は今でもスパスパとタバコを吸っているのかなぁ、などとふと考えることがあります。