コメダ

  日本在住のイタリア人が和食や日本のスイーツを褒めまくるという本について以前書きましたが、その本の中にはコメダ珈琲店に関する記述もあり、著者はコメダを大絶賛しておりました。私はその本の著者のツイートもフォローしているのですが、そこでもコメダが度々登場します。東海地方に住んでいる私からすると、コメダは極めて名古屋っぽいお店であり、スタバやタリーズなどの海の向こうからやってきた今風の小洒落たカフェに対抗できるはずがないと思っておりました。ところがコメダは予想を裏切って北海道から沖縄県まで文字通り全国へ店舗を展開し、コロナで外食産業が大きな痛手を被っている中でも失速することなく、むしろ勢いを増したかのようです。時代的にはいかにも昭和っぽいコメダが日本中で受け入れられたばかりか、イタリア人のハートもがっちり掴んで離さないのは何故なのか、とても興味があります。

 そんなコメダへ先日も行きました。朝でしたのでモーニングのメニューの中から小倉餡トーストとアイスコーヒーのセットにゆで卵を追加しました。以前はパンは食パンしかありませんでしたが、ローブパンという丸いパンが新たにメニューに加わったので、そちらを食べてみました。味はまあ普通というか特別美味しいというわけではありません。食べ終えてから菓子パンを食べないことにしていたことを思い出したのですが、まあいいか。

 

店員と客

 お店などに何度か行き、やがてお店の人と親しげに会話を交わすようになることは一般的にはあります。ただ特にチェーン店の場合だと客とどう接するかはルール化されているところが多いようで、例えばコンビニでは、レジの店員が客に対して「おはようございます。今朝はいつもよりも早いんですね。」などと話しかけるのはNGなのだそうです。特定の客と親しげにするのがいけないのだそうです。というか、コンビニの店員に「いつもより早いですね」とか言われたら気持ち悪いと感じる人が多いみたいです。私もどちらかというとそうで、コンビニにそういうフレンドリーな関係を全く期待していないし、まるで自動販売機で買い物をするが如く、極めてドライで無機質であることを望んでいたりします。逆にスタバの場合は、店員に話しかけられることがよくあります。私はカフェラテなどにエスプレッソのショットを追加することが多いので、そういう飲み物を作りながら「濃いのがお好きなんですねぇ。私はエスプレッソがなかなか飲めるようになれなくて・・・」などと話しかけられることは度々あります。これはスタバの店員が元々人懐っこい人が多いからでもなければ、客と親しくなりたいと思っているわけでもなくて、待ち時間(スタバでは飲み物が出来上がるのに少なくとも数分間は待たされるので)に客が感じる退屈さやイライラを少しでも和らげて、また来店して欲しい、即ち売り上げを上げたいからに過ぎません。ただこれらの「客と店員の親密度」は文化的な背景の影響が大きく、私がかつて住んでいた米国だとコンビニ的なお店であろうとフレンドリーな人が多かったのは、米国がそういう文化だからです。米国だと飛行機でたまたま隣の席になった人に「どこへ行くの?」と話しかけられて暫く会話が続くことも珍しくありませんでしたし。

 先日、自宅からほど近いところにある定食屋で食事をしました。そのお店のことは何度か書いたことがありますが、昔ながらの昭和的な定食屋で、周囲にチェーン店の定食屋や唐揚げ専門店が幾つもオープンして競争にさらされている中を頑張っているので、応援したいという気持ちから時々訪れるようになってから1年以上は経ったかと思います。そのお店は店主夫婦と店主の母(おばあさん)が働いていて、店主の父親である先代の店主はお店の片隅に腰掛けて「いらっしゃいませ」とか声を出したりしています。先日行った際に、そのおばあさんが私が注文した定食の他に茶碗蒸しを持ってきてテーブルの上に置いて「にいちゃん、これも食べてね。」と言いました。どうやら他のメニュー用に作っておいた茶碗蒸しが余っていたようで、ラストオーダーの時刻を過ぎていたこともあり、私にサービスしてくれたようでした。その心遣いは嬉しいものの、そこまでしてくれなくてもいいのに、と思いました。その好意による行為がいささか重たく感じました。あと、実は私は茶碗蒸しがさほど好きではないですし。

第3巻

 『ザ・ファブル  The Second Contact』というアクション漫画の第3巻が先週発売となったので、電子書籍で購入して読みました。1巻や2巻を買った時にも書いたかとは思いますが、第一部では壮絶な闘いを繰り広げ、とっても良い形でフィナーレを迎えてめでたしめでたしで終わったのですが、おそらくは続編を望む読者の声が多かったのか、第二部が始まりました。私もファンの1人として続編が始まったこと自体は嬉しかったのですが、アクションシーンが少な過ぎて物足りなさを感じていました。それが第3巻になって少しエンジンがかかってきたというか、悪い奴らが蠢きだしてきて、さあこの後どうなるんだろうかと期待が持てるようになってきました。

 さて、この『ザ・ファブル』という漫画は、第一部から現在までの累計の発行部数が1,600万部を超えているのだそうです。漫画の印税が何%なのかは知りませんが、一般の書籍と同じ10%だとすると、印税による作者の収入は10億円を超えている計算になります。更に、岡田准一主演で映画化された2本が両方とも大ヒットしたので、その売り上げの何%かは原作者にも入ってくるでしょうから、それもおそらくは億単位かもしれません。漫画家というのは過酷な仕事ではあるけれど、一発当てれば大きいのだなぁとあらためて思いました。

 

野田知佑さん

 NHKのFMラジオのトーク番組を聞くともなく聞いているとゲストの方が自分の好きな本や最近読んだ本を紹介するコーナーになりました。面白い本がないかと常にアンテナを張っている私としては、そこで「聞くともなく聞くモード」から「集中モード」に切り替えてどんな本について語られるか一言も聞き漏らすまいと身構えて耳をそばだてました。2人いるゲストのうちの片方(落語家)が最初に紹介したのは野田知佑さんの『日本の川を旅する』という本でした。久々に野田知佑という名前を聞いて、たいへん懐かしく思いました。野田知佑さんは日本のカヌーイストの第一人者で、カヌーに乗って世界中の川を旅し、数多くの紀行文を執筆し、本を出されてきました。私も『日本の川を旅する』をはじめ野田さんの本を何冊か読んでおり、中でもカナダとアラスカを通ってベーリング海に注ぐユーコン川を下った『ユーコン漂流』が強く印象に残っています。野田さんはカヌーに犬を乗せて一緒に旅をすることが多く、そういうスタイルに激しく憧れて、いつか私も犬を連れて旅に出たいものだなぁと夢想したものでした。

 野田さんの本を紹介した落語家が野田さんのことを過去形で話すのが気になったので「まさかっ・・・」と思って調べてみると、野田さんは今年の3月にお亡くなりになっていたことが分かりました。最近は野田さんの本を全く読んでいなかったとはいえ、好きな作家のひとりだったのでショックでした。84歳だったそうです。世界中を旅してきた野田さんはきっと思い残すことなど無かったことでしょうし、三途の川もカヌーに乗ってスイスイと渡っていったのかも知れません。御冥福をお祈りしつつ、久々に野田さんの本を再読してみたくなりました。

 

 

金の時計

 平日の出勤日とほぼ同じ時刻に名古屋駅に到着。新幹線の券売機に向かって歩いていると若い女性(18か19歳ぐらい)の2人組に呼び止められて「金の時計ってどこにあるんですか?」と尋ねられました。名古屋駅のコンコースには「金の時計」という文字通り金色の時計があって、待ち合わせ場所として利用されています。この2人の女性もお友達と待ち合わせの約束をしたのでしょうが、名古屋駅にはあまり詳しくないようです。焦っているような表情をしていることから、待ち合わせの時刻に既に遅れてしまっているように見て取れました。私は勿論「金の時計」がどこにあるのかは知っていますが、呼び止められた地点から「金の時計」へ行くにはクランク状の通路を経由することになります。下図のA地点が呼び止められた場所で、B地点が金の時計の場所です。

 このルートを口で説明して分かってもらうのは若干面倒だなと思ったので、途中まで一緒に行ってあげることにしました。2人は焦っているので速く進んだ方がよいのでしょうけど、彼女たちはスーツケースを引きずっているのであまりスピードを上げるわけにもいかず、何とも中途半端は速さの小走りで走っていきました。そしてクランク部分を抜けると、「あとは暫く行って広いスペースに出ると右手に金の時計があるからね」と説明し、そこで彼女たちとは別れました。多分、友達と待ち合わせをして、高速バスで東京ディズニーランドとかへ遊びにでも行くような感じでしたが、間に合ったのかな。