コーヒーとジャック・リーチャー

 リー・チャイルド作のアクション小説のジャック・リーチャーシリーズは、原作(英語)は21作が発表されていて、このうちの8作が日本語に翻訳されていています(いずれも講談社文庫)。私は和訳された8作を古いものから順に読んでいて、今は5作目を読んでいます。
 このシリーズは、トム・クルーズ主演で2作が映画化されました。映画は映画で面白いのですが、小説には描かれているのに、映画では一切触れられていないことがいくつかあり、そのうちのひとつが主人公のジャック・リーチャーがたいへんなコーヒー好きということです。物語の中でコーヒーに関する描写が出てくると、コーヒー好きな私としては激しく反応してしまいます。どの作品だったかは忘れてしまいましたが、コーヒーが飲みたくても飲めない状況で、ジャック・リーチャーが「今すぐコーヒーを飲みてぇ!」的に苦悶するシーンがあったのですが、そのツラさが私にも痛いほどわかり、出来ることなら今すぐコーヒーを淹れてジャック・リーチャーに差し出してあげたい気持ちになりました。
 今読んでいる『アウトロー』で、リーチャーが検事のオフィスを訪れるシーンがあります。このオフィスで、秘書がリーチャーにコーヒーを出すのですが、コーヒーはカフェティエールに入れられてリーチャーの前に出されます。カフェティエールとは何だろうかと思って調べてみましたら、カフェプレス、日本ではフレンチプレスと呼ばれているものでした。ここで「リーチャーはカフェティエールのピストンを押し、自分でカップにコーヒーをついだ。クリームもシュガーも入れなかった。色が濃く、強い香りがした。これがコーヒーだ。」と書かれていて、なるほど、リーチャーはフレンチプレスで淹れたコーヒーを美味しいと思うんだ、私と一緒だ、やっぱそうだよね、と強い共感を覚え、ますます感情移入してその先を読み進んでいったのでありました。