アイスランドのミステリー

 北欧のミステリー(推理小説)がブームとなり、その後、ひとつのカテゴリーとして定着して久しい中、アイスランドの作家が書いた『湿地』というミステリーが書店の棚でたまたま目にとまりましたので買って読んでみました。「ガラスの鍵賞」という北欧におけるミステリーの権威ある賞を受賞し、また日本では2013年のミステリマガジンの「ミステリが読みたい!」の海外篇で第1位を獲得したそうです。読む前にこういう受賞歴を知ってしまうと、否応無しに期待は高まり、優れた作品であっても、何だかちょっと物足りなさを感じてしまうのでした。ただ、ミステリーとしては良く出来ていると思います。

 ところでアイスランドという国については、国名は勿論知っていますし、場所については「だいたいあの辺りだろうな」という見当はつきます(アイスランドの人だって日本がどこにあるのか正確に知っている人は少ないような気がします)。アイスランドという国は、日本と同様に「単一民族国家」なのだそうです。それがこのミステリーの謎を解く鍵のひとつになっていました。それから漁業が盛んなことも日本との共通点のひとつです。漁業は昔から続いているのですが、途中から国は金融・不動産分野へ力を入れ始めました。1990年代から2008年まではアイスランド経済は絶好調で、金融・不動産部門でGDPの26%を占めるまでになっていたのですが、2008年9月のリーマンショックで三大銀行が破産し、国は非常事態宣言を発することになりました。そんな中でも金融に手を出さなかった漁業関係者は生き残り、自国通貨が下落したことにより輸出のメリットが大きくなり、確実に外貨を稼いでいったのだそうです。

 アイスランドは天気の変化が激しいところでもあり、1日で5つの天気(例えば雨、強風、曇り、晴れ、雷など)を経験することもよくあるそうです。一日中快晴という日はめったに無くて、たまにそういう恵まれた天気になると商店や会社は「本日は快晴につき休業」と書かれた紙を貼り出して、太陽に顔を向けて外に座っているのだそうです。そういうのが許される国民性が、どこか羨ましく感じます。

湿地 (創元推理文庫)

湿地 (創元推理文庫)