日本のアクション小説

 アクション小説が好きで、これまでにもたくさん読んできました。その全てが欧米の作家の作品の翻訳版で、日本の作家が書いたアクション小説は読んだことがありませんでした。その最大の理由は、アクション小説には拳銃やマシンガンなどの銃火器類がストーリーの小道具として不可欠なのですが、日本では銃火器の入手が困難で、現実には裏社会でさえしょぼい拳銃しか持っていないのに、日本を舞台にした小説の中でたくさんの銃火器が出てきたら、そんなことがあるはずはないと一気にシラけてしまうだろうし、かと言って銃火器が全く登場しないか、登場してもショボかったらアクション小説としては面白みに欠けるものになるでしょう。

 しかし、今回は『邦人奪還』という日本の作家による作品を読みました。何故なら、自衛隊の特殊部隊が北朝鮮拉致被害者の救出しに行くというストーリーで、しかも著者は元自衛官なので、これは面白いに違いないと思ったからです。実際にアクションシーンの量は必ずしも多くはなかったですが、質的には欧米の作品にひけをとらないレベルでした。元自衛官のような立場であるからこそ出来る描写も随所にあって大変興味深かったです。

 ただ、小説の中で日本の自衛官が危険な作戦に参加しているシーンでは、私と同じ日本人が命を失う危険と背中合わせでいることが心配で仕方がありませんでした。これは欧米の小説ではあまり感じないことでした。

邦人奪還―自衛隊特殊部隊が動くとき―

邦人奪還―自衛隊特殊部隊が動くとき―