『東京百景』

 暫く前に『劇場』という小説を読んで、世間から随分と遅れて又吉直樹さんの小説家としての才能と魅力に気が付いた私でした。別の作品もすぐに読んでみたいと思い、会社帰りに閉店間際の書店へ駆け込み、取り敢えず作者が又吉さんであることだけを確認して『東京百景』という1冊の文庫本を購入しました。早速帰りの電車に揺られながら買ったばかりの『東京百景』を読み始めたのですが、小説かと思ったらエッセイでしたので「しまった・・・」と、ちゃんと確認せずに買ったことを後悔しました。しかし読み始めるとこのエッセイがしみじみと味わい深くて、ますます又吉文学に惹かれてしまいました。

 タイトルの通り、東京でのエピソードが100篇収められています。高校を卒業して大阪から上京し、東京吉本の養成所を経て芸人となりブレイクする前までの又吉さんとその頃の東京の情景が語られています。読みながら、私自身が東京で過ごした4年間と重ね合わせてみたりもしたので余計に心に響いてきました。

東京百景 (角川文庫)

東京百景 (角川文庫)