野田知佑さん

 NHKのFMラジオのトーク番組を聞くともなく聞いているとゲストの方が自分の好きな本や最近読んだ本を紹介するコーナーになりました。面白い本がないかと常にアンテナを張っている私としては、そこで「聞くともなく聞くモード」から「集中モード」に切り替えてどんな本について語られるか一言も聞き漏らすまいと身構えて耳をそばだてました。2人いるゲストのうちの片方(落語家)が最初に紹介したのは野田知佑さんの『日本の川を旅する』という本でした。久々に野田知佑という名前を聞いて、たいへん懐かしく思いました。野田知佑さんは日本のカヌーイストの第一人者で、カヌーに乗って世界中の川を旅し、数多くの紀行文を執筆し、本を出されてきました。私も『日本の川を旅する』をはじめ野田さんの本を何冊か読んでおり、中でもカナダとアラスカを通ってベーリング海に注ぐユーコン川を下った『ユーコン漂流』が強く印象に残っています。野田さんはカヌーに犬を乗せて一緒に旅をすることが多く、そういうスタイルに激しく憧れて、いつか私も犬を連れて旅に出たいものだなぁと夢想したものでした。

 野田さんの本を紹介した落語家が野田さんのことを過去形で話すのが気になったので「まさかっ・・・」と思って調べてみると、野田さんは今年の3月にお亡くなりになっていたことが分かりました。最近は野田さんの本を全く読んでいなかったとはいえ、好きな作家のひとりだったのでショックでした。84歳だったそうです。世界中を旅してきた野田さんはきっと思い残すことなど無かったことでしょうし、三途の川もカヌーに乗ってスイスイと渡っていったのかも知れません。御冥福をお祈りしつつ、久々に野田さんの本を再読してみたくなりました。