鼻の穴の形

 自分の顔に関しては、コンプレックスがありました。特に自意識が過剰になりがちな10代の頃は、自分の顔のここが嫌だあそこが嫌だ、と複数の箇所が気に入りませんでした。とりわけ気にしていたのが鼻の穴の形で、丸みをおびた自分の鼻の穴が何だか小さな子供のようで嫌で仕方がありませんでした。ただ、私の父も母も鼻の穴はきれいな三角形でしたので、この2人の遺伝子を受け継いでいる自分は、現時点では鼻の穴が丸い形をしていても、いずれ大人になれば父か母のように三角形になるかもしれない、いやなるに違いないと、と希望を胸に抱いていました。

 ところが大人になっても鼻の穴の形は一向に三角形にならず、最近は気のせいかむしろ更に丸みをおびてきたようにさえ見えます。父、母のどちらかに似ると思っていたのに、何故なんだろうと、希望が砕け散った私の脳裏に浮かんだのは父方の祖母の顔でした。そういえば、随分前に他界したおばあちゃんの鼻はいわゆる団子鼻で、鼻の穴も丸かったような気がします。なんでそこだけ隔世遺伝するのかな。そんな私の最後の救いは、コロナ以降、マスクを着用する時間が長く、丸い鼻の穴を人前に晒す機会が減ったことです。鼻の穴なんて誰もシゲシゲと見つめたりするものではないので、気にしなきゃいいだけの話なのですが、いまだにコンプレックスとなって私の心を苦しめるのでした。