彩雲

 何年か前、まだ写真を趣味としていて、風景写真をせっせと撮っていた頃、東京在住のプロの写真家(普段は広告写真等を撮影している方)が主催した富士山撮影の勉強会のようなものに参加したことがありました。参加者は私を入れて6〜7人だったと思います。真冬の早朝、まだ夜が明ける前に山梨県忍野村に集合し、まずは二十曲峠にて富士山の上の方が朝日によって赤く染まる「紅富士」の撮影に挑戦。その後、車で別の撮影スポットへ移動。詳しい位置は覚えていませんが、お医者さんとかの富裕層が所有する別荘が立ち並ぶエリアの近くだったと記憶しています。そこでは富士山に掛かる笠雲を逆光で捉えるという試みでした。講師であるプロの写真家が「あ、彩雲が見えますね。あれを撮りましょうっ!」と言ったので、参加者は各自三脚を立ててカメラをセットし、望遠レンズを富士山に向けました。私はその時は彩雲(さいうん)という言葉を知りませんでしたが、彩雲とは、虹が出来るのと同じように、雲の中の水滴がプリズムの働きをして太陽光が回折し、赤や緑などに雲が染まる現象です。風や雲や光の当たり具合は刻々と変化しますので、とにかく早く早くと急かされるのですが、彩雲なんてものを知らなかった私はどうしていいのかよく分からず、取り敢えず何枚かシャッターを切りました。その写真はフジフィルムのヴェルヴィアというポジフィルムで撮ったのですが、後日現像したものをルーペで覗いてみると、やっぱり上手くは撮れていませんでした。

 それ以来、彩雲についてはすっかり忘れてしまっていたのですが、昨日のブログに書いた鳴沢村のアマチュアカメラマンのツイッターにアップされている写真の中に彩雲を発見し、なるほど、紫雲とはこういうふうに撮るのだなと納得しました。思い切って露出(明るさ)をぐっと落として富士山本体と空も暗くなるようにして、彩雲の色彩だけが綺麗に見えるようにするのが彩雲の正しい撮り方なのでした。機会があれば、また挑戦してみたいです。