アメリカへ渡って初めて迎えたクリスマスシーズンはカナダで過ごしました。同じ寮に住んでいたインドネシア人の留学生(H君)が、カナダのビクトリアという都市に住んでいる彼の叔父の家へ遊びに行くので一緒に来ないか、と誘ってくれたので、喜んでついていったのです。
ビクトリアはカナダの西海岸に面した海に浮かぶバンクーバー島にあります。まず私が住んでいたオレゴンからワシントン州シアトルまではグレイハウンドという長距離バスで移動し、そこから船(フェリー)でバンクーバー島へ渡りました。
フェリーを降りて港で待っていると、H君の叔父の奥さんとその娘が車で迎えに来てくれました。その車が、ぴかぴかのメルセデス・ベンツだったので(ベンツに乗ったのは私の人生で後にも先にもこの時だけ)、「どうやら、H君の叔父さんはお金持ちらしい」と察しがつきました。
港から車で暫く行った所にある高級そうな住宅が建ち並ぶエリアの一角にH君の叔父の家はありました。広い敷地に建っているその家は、地上1階、地下1階の水平方向にとても広い家で、H君の叔父、その妻、中学生の娘、小学生の息子、お手伝いさん(遠い親戚)の5人が暮らしています。まずはじめに家の中のツアー(どこに何があるかの紹介)をしてもらったのですが、とにかく大きくて豪華な部屋がたくさんあったので驚きました。
H君の国籍はインドネシアですが、民族としては中国系です。インドネシアに占める中国系民族の人口割合は僅か数%ですが、国の経済の大部分を中国系が支配下におさめているのだそうです。H君の叔父さんは、親族のツテをたどってカナダに移住し、そこでドラッグストアのチェーン店のオーナーとなり、財を築いたのだそうです。
ビクトリアは、春には街中が花で溢れ返りとても美しいらしいのですが、冬場はあいにくこれと言った物がありません。暇を持て余した私とH君は、昼間は叔父さんのドラッグストアでお手伝いをしたり、夜は家族ぐるみでお付き合いしているという他のアジア系移民のお宅を訪問して御馳走になったりしました。今から振り返ってみると、日本にいては出会うことも無かったであろう人たちに会って異文化を肌で感じることができたことは、とても貴重な体験だったと思います。