F君のお姉さん

 昨日、学校給食に関することを書いていて思い出したことがありました。今の小学校にはそういうシステムは無いのかもしれませんが、私の頃は誰かが学校を休むとその日の給食の食パンと、たまたまその日のメニューの中に果物(リンゴとかミカンとか)があればそれも一緒に休んだ子の家まで届けなければなりませんでした。届けるのは学校帰りにその子の家の近くを通る生徒が担当します。まだ私が小学1年生だった頃のある日、近所のアパートに住んでいるF君がお休みしたので食パンとリンゴを届けに行きました。アパートの部屋にはカギがかかっていなかったので、ドアを開けて「Fく〜ん」と大きな声で言いました。しかし誰も出てきません。その後も何度か大きな声で呼びましたが応答無し。普通はそこで「ああ、お留守なんだな」と気が付いて食パンとリンゴをそっと置いて立ち去るのでしょうが、まだ小さかった私はそこまで気が回らず、食パンをおうちの人に手渡すというミッションを完遂するまでは帰ってはいけないんだと思い込み、愚直にもF君の名前をずっと叫び続けました。さすがにもう帰ろうかと思い始めた時、やっと中から人が出てきました。それは普段F君が「お姉さん」と呼んでいる人ですが、年齢はたぶん20代前半ぐらいでしたので実の姉というわけではなく、今にして思えばいろいろと事情があって同居している人だったのでしょう。で、問題は私の前に現れたそのお姉さんが裸にバスタオルを巻いた状態だったことです。「あ、お風呂に入ってたんだ。だからなかなか出てこなかったんだ!」と分かったのですが、大人の女性がそういう格好でいるのをすぐ目の前で見るのは小学1年生の児童にとってはあまりにも刺激が強すぎ、とてつもなく緊張してしまい、急いで食パンとリンゴを手渡すと逃げるように走って帰ったのでした。そういう子供の不躾な行いを咎めるようなこともせず、「ありがとう」と言って受け取ってくれたあのお姉さんは優しかったんだなあと今になってしみじみ思います。
 そして今になって思うことはもうひとつあって、あの頃は子供だったので「裸+バスタオル→お風呂」と単純に判断したわけですが、大人になってから冷静に考えてみると「裸+バスタオル」は必ずしも「お風呂」だとは限らないよなぁ・・・、もしや! なぁんてことを想像してみたりしました ^^;)