『13時間 ベンガジの秘密の兵士』

 映画『13時間 ベンガジの秘密の兵士』をレンタルで観ました。2012年9月11日にリビアベンガジで実際に起きた事件を映画化したものです。この前年の2011年に公開されたアメリカ映画『イノセンス・オブ・ムスリム』の内容がイスラム教の預言者ムハンマドを冒涜するものだとして、これに対する抗議活動が中東で発生し、9月11日にベンガジアメリカ領事館が地元の過激派組織に襲撃されます。当時、領事館からさほど離れていない場所にCIAの拠点があり、そこには元対テロ特殊部隊等の精鋭メンバー6名からなる戦闘部隊がおり、救出へ向かう準備が出来ていたにも拘らず、上層部の指示によりアメリカ領事館への救出作戦に待ったがかかり、当時領事館にいた外交官(スティーブン大使)は殺害されてしまいました。その後、今度はCIAの拠点が襲撃され、CIAは近隣のアメリカ軍基地からの救援を要請しますが何故か却下され、見放された状態となり、多くの死傷者が出てもはや万事休すとなったギリギリのところで地元リビアの親米組織によって救出されたのでした。

 しかし、その後の調べにより『イノセンス・オブ・ムスリム』という映画の内容に対する抗議活動がアメリカ領事館の襲撃に発展したのではなく、この襲撃は映画とは関係が無い理由でアルカイダが行ったテロだということが分かってきました。この襲撃事件が起こった2012年はオバマ大統領の2期目の選挙の年であり、アルカイダのテロ活動を抑え込んでいるという成果を強調したいオバマ陣営にとって、ベンガジでの領事館襲撃はテロではないことにしたかったという思惑があり、従って米軍による救出も行わなかったのではないかと言われています。だとすると、2期目の大統領選に勝つために、中東で祖国のために戦っているアメリカ国民が見殺しにされたという事実は、それが政治の常とは言え、あまりにもひどい話だなとオバマや当時国務長官であったヒラリー・クリントンに対する私の個人的な評価がガラッと変わるきっかけとなった映画でした。