タケシ

 今年のお盆休みに長野へ行った際、丸山珈琲でコーヒー豆を2種類ほど買い求めました。そのうちのひとつは、ボリビア産の深煎り豆でした。丸山珈琲は、スペシャルティコーヒーを日本で広めた先駆者と言われており、販売している全てのコーヒー豆について、生産国だけでなく農園名や生産者の名前、農園の標高や面積、収穫後のコーヒー豆の処理方法等の詳細な情報が店頭のリストや公式サイトで見られるようになっています。その情報によりますと、私が購入した豆のうちのひとつは、ボリビアの農園で収穫されたものでした。農園名は「アグロ・タケシ農園」。「タケシ」というのは、もしかして生産者の名前で、日系人なのかな、と思ったのですが、農園情報を読んでみると生産者はカルロス・イトゥラルデというボリビア人(たぶん)でした。では「タケシ」とは何なんだろうかと更に読み進むと、現地の言葉で「人々を目覚めさせる」という意味であると書いてありました。この場合の「目覚めさせる」は、コーヒーのカフェインで目覚めさせるという直接的な意味ではなくて、人々を啓発してより高い次元へと導く、というような意味ではないかと個人的には解釈しています。
 この「タケシ」という日本では馴染みのある単語が、意味合いは異なるとはいえ、地球の裏側にある国に存在するというのは、たいへん興味深い事実であります。ここで思い出すのは、ペルーとボリビアにまたがるアンデス山の中にある「チチカカ湖」という淡水湖の名前が、日本語の「父母(ちちはは)」に由来しているらしいという説です。この説がどれほどの信憑性があるのかは分かりません。また、こういった「同じ(あるいは類似した)発音の単語があること」を根拠として、古代インカ帝国に日本人が関与していたという説もあったりしますが、これをネットで検索してみるとマユツバ感がたっぷりで、UFOやピラミッドの謎と同類のいかがわしさが全開で、流石に鵜呑みにする気にはなりません。でも、もしかしたら古代において日本と南米が何らかの形で繋がりがあったのかも、と想像するのはちょっと楽しいです。