虫歯の詰め物

 虫歯の治療、特に奥の方の歯の場合は、悪い所を削って金属製の詰め物でフタをすることがあります。しかし、そのフタは未来永劫そのまま安定しているわけではなく、何年か経ってから何かの拍子に、例えば堅い物や粘着性の高いものを食べた時に、ポロッと取れてしまうことは決して珍しいことではありません。
 しかし、その金属製の詰め物が自分の歯から外れたのではなく、その時に口にしていた食べ物の中に入っていた、と思う人も中にはいらっしゃるようで、私の会社(菓子メーカー)のお客様相談室にも「あんたの会社のチョコレートの中に変な形をした金属が入っていたぞ!」というお電話やお手紙を頂くことが年に何回かあります。
 その金属は後日、お客様相談室に郵送されてきて、だいたいは一目見て「これは虫歯治療の詰め物だな」とわかるのですが、手続き上、ちゃんと専門家(歯科医)に鑑定してもらい、一方ではその製品が製造された時の工程に問題が無かったかどうかをチェックします。
 チョコレートなどの菓子の製造工程には、異物混入を防止するための措置が何重にも設けられており、それらの全てをすり抜けて製品に混入する可能性はゼロではありませんが、特に金属の塊といった比較的検出し易い物が混入する確率は低いと考えられます。しかし、それはあくまでメーカー側の論理なので、お客様にはありのままを説明した上で、今後は品質管理の向上に尚一層努力します、とお伝えして何とか納得して頂いております。でもそれは表面的に言葉の上で「努力します」と言っているわけではなく、実際にお客様からの声を契機に品質向上の対策を見直すことになるので、お客様の声は厳しいけれど、ありがたくもあります。