バス

 いつもは、会社から駅までは40分ほどかけて歩いて帰るのですが、今日は何となくバスに乗ってみました。久しぶりに乗るバスの車内は、いつものように静かで、決められたバス停に停まり、ドアを開け、客を乗せ(あるいは下ろし)、再び走り出すという作業を粛々と数回繰り返し、何事も無く名古屋駅に到着しました。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の英語学校に通っていた頃、せっかく大学の近くのアパートを借りたのに、大学側の事情で暫くの間は遠く離れたダウンタウンで授業が行われたため、毎日1時間ほどかけてバスで通っていました。このバスには、ロサンゼルスという地域がら、実にいろんな人が乗ってきて、まさに「オムニバス」という感じで、毎回何かしら「ちょっとした出来事」があり、見ていて面白かったです。
 アメリカの(少なくともロサンゼルスの)バスは、防犯上の理由で、料金箱に入れたお金は出てこない仕組みになっていますので釣銭が出ませんし、運転手はお金に触ってはいけない規則になっているらしく両替もしてくれないので、運賃をきっちり用意しておかねばなりませんでした。でもそこはアメリカ、中には「いまちょっと小銭がなくてさぁ、10セントほど足りないんだけどいいかな?」などと言って乗ってくる客もおり(運転手は黙って頷いて乗せてました)、日本ではこういう事は絶対に無いよなぁ、と思いながら見ていました。

 また、同じ年の夏、暫くの間、アメリカの北東部にあるバーモント州の小さな町に滞在していたことがあり、ある暑い日、私は暇だったので取り敢えずバスに乗って町はずれまで行ってみようと思い立ちました。数人いた乗客が降りていき最後は私ひとりになり、窓から外の風景をぼんやりと眺めておりましたところ、コンビニの駐車場にバスが停車しました。「こんな所がバス停になっているのか?」といぶかしげに見つめる私の視線などおかまいなしに、運転手(20代ぐらいの逞しい体つきをした女性でした)はエンジンを切り、無言でスタスタとバスを降り、コンビニへ入って行きました。車内に独りポツーンと取り残されてしまった私…。5分ぐらいしてペットボトルを1本手にして店から出てきた運転手は「ごめん、急にトイレに行きたくなっちゃってさ」などと言った釈明も一切無く(英語が通じないと思ったのか?)、やはり無言で運転席に座り、エンジンを始動させ、何事も無かったかのように本来のルートへ戻って行きました。私としては、どうせ暇だし、むしろ珍しい場面に遭遇して得した気分というか、面白かったのですが、こういうことは日本じゃ絶対に無いだろうな、と思いました (^^;)