『猟師の肉は腐らない』

猟師の肉は腐らない

猟師の肉は腐らない

 先日、あるラジオ番組をPodcastで聴いておりましたら、東京農大名誉教授の小泉武夫先生が出演しておりました。小泉先生は醸造学科で発酵に関する研究を専門に行ってこられた方で、テレビやラジオにもよく出ますし、著書も多数あります。
 そんな小泉先生ですが、今回のラジオ番組では昨年出版された『猟師の肉は腐らない』という本を紹介しておりました。驚いたのは、この本はエッセイやノンフィクションではなく、小説だということ。小泉先生はこれまでにたくさんの本を書いてきましたが、それは御自分の専門分野に関することなのでいくらでも書けるのでしょう。しかし、小説となると話は別で、いくら構想があったとしても、それを小説という形に仕上げるのはまた別の能力が必要なのでは。一体どんな小説をお書きになるのだろう、と興味が湧いてきたので読んでみることにしました。
 東北の山で猟師として暮らしている「義っしゃん」を東京の大学で学者をしている「俺」が訪ねていき、そこでの野性的な生活を通して友情を育むと同時に様々なことを学ぶというお話です。そこに書かれているのはおしゃれなアウトドアライフではなく、電気も水道も来ていない場所で、昔からの生活の知恵を活用して生き抜いていくというもので、グイグイと惹かれて一気に読んでしまいました。