朗読

 家の中や車の中で、ふとラジオのスイッチを入れるとNHK第一で小説が朗読されていることがあります。小説を読むこと自体は好きなので、どんなお話なんだろうかと興味を持ってその朗読を聴き始めるのですが、暫くすると何だかしっくりしない違和感が涌き起こってきます。自分で小説を読む際は、自分のペースで、自分なりに想像した登場人物像を思い描きながら読むわけですが、それらとラジオの朗読との間に決して小さくはない差が感じられるからのように思われます。朗読を行っているのは、大抵は男性のアナウンサーなのですが、女性の登場人物の台詞を何となく女性っぽさを漂わせながら読む事にも違和感があります。こういったこともあり、ラジオの朗読はあまり好きにはなれません。
 ただひとつ、今まで聴いた小説の朗読の中で良かったのは、椎名誠さんの小説『岳物語』を椎名さん自身が朗読したものでした。これはラジオではなく、他の音源で聴いたのですが、さすがに著者なので、抑揚だとか語気の強弱等といった細かい部分も完璧でありますし、椎名さんの声質が何とも言えず良いということもあり、素晴らしい出来栄えの朗読でした。