Hay Fever

 花粉症の季節になると毎年のようにふっと思い出すことがあります。花粉症は英語では"hay fever"と言います。社会人になってまだ間もない20代の頃、名古屋の英会話スクールに通っていました。私のクラスの担当の先生はカリフォルニア出身の若くて綺麗な女性でした。この先生はとてもアクティブな人で、英会話講師の他にも様々な活動に参加しており、外国人から成る地元の演劇グループにも所属していました。次の日曜にそのグループの公演があるので「観に来てね」という告知が英会話のクラスの中でありました。その演劇のタイトルが『Hay Fever(花粉症)』。「どんな演劇なんだろう?」と興味が湧いたので私は観に行くことにしましたが、他の生徒達は別の予定があったのか誰も行かないということでした。私はてっきりその先生も役者の一人として舞台の上で演技をするのかと思っていたのですが、よくよく聞いてみると今回は裏方として参加しただけで、上演中は観客席に座って観るのだということがわかりました。つまり、アメリカ人女性の近くに座って(あるいは成り行きによっては隣に座って)英語の劇を観ることになったのです。そこで私は当日はどんな服装で行けばいいのか悩みました。外国人女性と演劇を観たことなんて無いので、そういう場にどういう服を着ていくのがふさわしいのか見当がつきません。仕方が無いので私は海外のドラマや映画の中にそういうシーンがなかったか記憶の中を検索しました。そこで思い当たったのが映画『プリティウーマン』でジュリア・ロバーツリチャード・ギアがオペラを観に行くシーン。あの時、確かリチャード・ギアはタキシードを着てたよなぁ。タキシードなんて持ってないしなぁ、どうしようかなぁ・・・、と激しく悩んだ末、結局普通の服装で行きました。会場に来てみると、勿論タキシードを着ている人なんておらず、みんなカジュアルな服装でした ^^;) 
 客席で私は先生の隣に座ることになりました。劇が始まり、照明が落とされたほの暗い客席で美しいアメリカ人女性のすぐ隣にいた私はとてつもなくドキドキしてしまい、どんな内容の劇だったかほとんど覚えていません。ただクシャミをするシーンがあったことだけは覚えていますが。