ウイスキーでもコーヒーでも「ブレンド」というと何だかワンランク下に見られる風潮があります。ウイスキーはシングルモルトこそが素晴らしいのであるとか、コーヒーにおいては昨今のスペシャリティコーヒーブームにより、単一の豆で美味しいコーヒーこそが真の上級レベルのコーヒーである、とされており、実際にそういったものがコンテストで上位に入賞し、高い値段で取り引きされているようです。
かく言う私も、こういった価値基準を鵜呑みにして、シングルオリジンで美味しいものこそが真に価値のあるものであり、「ブレンド?ふん、そんなものは二流に過ぎんね」ぐらいの生意気な考え方を持っていました。
しかし、ウイスキーはともかく、コーヒーの場合は、特に私が好む深煎りの場合、シングルオリジンで理想的な風味を出すのは相当困難だということが段々と分かってきました。と言いますのは、苦味を強くするためには深煎りにするわけで、深煎りというのは焙煎温度を高くしたり、焙煎時間を長くしたり、あるいはそれらの組み合わせでしょう。そうすると、苦味は出るけど、焙煎を深くしたことにより焼失したり飛んでしまう風味が出てきます。ですから深煎りの豆は確かに苦味はしっかりしているけど、それ以外の風味(旨味とかコクとか)が感じられない、となってしまうことが多々あるわけです。その飛んでしまった風味を、まだそれらの風味が残っている浅煎りや中煎りの豆をブレンドして補うことにより、全体のバランスを整えることが出来て、これこそがブレンドの本質なのだということに最近になって気がつき、今では「ブレンドなんてものは二流に過ぎんさ」などいう思い上がった考えは間違っていたと反省しております。