スタバの豆に辿り着いたわけ

 コーヒー好きの私は、自分の好みの豆を探し求めていろんなお店を回っては購入し、あるいはネット通販で取り寄せて飲んできました。今のところ、スタバの深煎り豆(イタリアンロースト、フレンチロースト、エスプレッソロースト)が取り敢えずは私の好みに一番近いという暫定的な結論に達しました。この結果は意外でした。スタバの豆なんて工業的に大量生産しているでしょうから、そんなものよりも日本国内で小規模で丁寧に焙煎された豆の方が美味しいに違いないと思っていたからです。どうしてこだわりの自家焙煎の豆が、大量生産品に負けてしまうのか。

 ここでチョコレートを例に挙げてみます。チョコレートの原料であるカカオ豆には幾つかのグレードがあって、グレードが高い豆は欧米のメーカーへまずは優先的に回されるらしいのです。それは欧米のメーカーの方がカカオ豆の産地やそれを扱う業者との結び付きに長い歴史があるからです。そして日本へ回ってくるカカオ豆はグレードが低い豆になります。ヨーロッパの規格ではチョコレートに添加して良い香料はバニラだけですが、日本ではチョコレートにチョコレート香料を添加することが認められています。何故ならば、カカオ豆のグレードが低いのでチョコレートの風味が弱いからです。

 カカオ豆と同じようなことがコーヒー豆の取引でも起こっているのではないかと思います。即ち、グレードの高いコーヒー豆は欧米へ優先的に回され、日本へ入ってくるのはグレードの低い豆なのではないか。カカオ豆と同様、コーヒー豆の取引においても、日本よりも欧米の方が長い歴史がありますから。コーヒーの美味しさを決める要素は大まかに言って「豆の品質、焙煎、抽出」の3つがあり、それぞれが美味しさに寄与する割合は7:2:1と言われています。つまり、豆の品質で美味しさの7割にが決まってしまうということです。豆の品質さえ良ければそれだけで、焙煎と抽出の技術が平均的であっても美味しいコーヒーになり、逆に豆の品質が良くなければ、いくら頑固オヤジ風の職人がこだわり抜いて焙煎したとしても美味しいコーヒーにはならないということです。スタバのコーヒー豆は一部に日本国内で焙煎した豆がありますが(東京ロースト)、大部分はアメリカで焙煎されパッケージに入れられた豆が輸出され日本で店頭に並びます。アメリカでは当然のことながらグレードの高い豆が調達できますから、美味しいコーヒー豆になる。だからスタバで売っているコーヒー豆は美味しいのでしょう。

 最近では日本の焙煎業者がコーヒー農園と直接取り引きすることが徐々に増えてきているようです。そういったことを積み重ねていき、いずれは日本でも欧米並みのグレードが高い豆が流通し、美味しい豆が簡単に手に入る日が来ることを願っております。