『炭水化物が人類を滅ぼす』

 糖質制限ダイエットというものが話題になってから随分と経ったように思うのですが、これまでに出てきては消えていった数多くのインチキくさい「〇〇ダイエット」とは違い、この糖質制限ダイエットは消えていくどころか徐々に理解され、支持を広げていっているように感じます。その要因のひとつは、これを提唱する医師が少なからずいて、テレビの健康番組でその医学的根拠を説明しているからでしょうし(白澤卓二先生とか)、それに関連した書籍もたくさん出版されていて認知度を高めていったからでしょう。更に、ダイエットといえば我慢が付きものでツライのが当たり前でしたが、糖質制限ダイエットは糖質さえ制限すれば、タンパク質と脂質は好きなだけ食べていいのでストレスが少なく挫折しにくいというのも広く受け入れられる理由かもしれません。

 そういったジャンルの本の1冊として『炭水化物が人類を滅ぼす』という本を読みました。「糖質制限からみた生命の科学」という副題が付いております。この本も、書いているのはお医者さんですので、説得力があります。医学的な事実に基づき、所々に大胆な仮説を織り交ぜながら、なぜ炭水化物が害を及ぼすのかを説明しており、大変興味深い内容でした。
 凄く大雑把に言うと、人間の体の生理的なメカニズムは人類が誕生した頃からほとんど変わっておらず、太古の昔に人類が何を食べていたかというと、動物の肉とか木の実とかがメインであって、小麦や米などの穀物は食べていたとしても極僅かであったはずで、人間の消化器官は穀物を大量に消化吸収するようには出来ていない、というのが糖質制限のよりどころとなるポイントです。
 実際に、肉や油は特に制限無しで好きなだけ食べても糖質さえ制限すれば体重がどんどん落ちて、頭もスッキリし、その他の体の不調から解放されたという例が多数報告されているとのこと。

 なるほどそうなのかもしれない、と思います。しかしその一方で、これだけお米をたくさん食べてきた日本人が世界でトップクラスの長寿国なのはどうしてなんだろう、という疑問もあります。そのあたりについては、この本の中では触れられていませんでした。

 それから、糖質制限の大きな問題のひとつは、食費が高くなるということ。卵や大豆製品などの安価なタンパク源もありますが、一般的にタンパク質が豊富な食品(肉とか魚)は糖質・炭水化物主体の食品よりも高額になります。といことは、あるレベル以上の収入がある人(あるいは家庭)はタンパク質がリッチな食事をすることが出来るけど、低所得者は米やパンで腹を満たすしかなく、所得による健康状態の二極化に拍車がかかることになるのかなぁ、などと考えてしまいます。
 この本の中では、次世代のタンパク源として「昆虫」を利用する案を紹介していました。衛生的な環境で昆虫を繁殖させて、そこから抽出したタンパク質をパウダーにして食品に加工するというもの。現時点ではちょっとどうかなと思いますが、世界の食糧供給力が限界に来ていることを鑑みると、比較的近い将来に昆虫を利用した食品が出回るようになるのかもしれません。

 ところで私は、この本を読んで「糖質制限」への理解をより一層深めたので、自分自身の日々の食生活もそちらへ切り替えつつあります。しかし、なんせお菓子メーカーに勤務しておりますので、糖質を完全に摂取しないようにするのは不可能に近いのですが、出来る限りの制限するつもりでおります。