待つのが苦手な人達の国

 ちょくちょくスーパーで買い物をします。夕方から夜にかけての時間帯は混みあい、レジの前には長い列が出来て待ち時間が長くなるのですが、そこでいつも思い出すのがアメリカのスーパーのレジです。アメリカの大きなスーパーへ行くと、いくつかあるレジのうち、たいてい「エクスプレス(お急ぎ)レーン」とかいう名前のレジがあり、3品以内で支払いは現金(カードや小切手はダメ)であれば利用出来ます。客の中には、1週間分の食料をショッピングカートにどっさりと積み込んだ人もいれば、1品しか買わない人もおり、そうした客たちが同じ列に並ぶのは合理的ではないという考えから登場したシステムだと思われます。
 そもそもアメリカ人は待つのが苦手なようで、スーパーのレジで精算する前に商品(サンドイッチや飲料)を食べ始める人は(子供だけでなく大人も)珍しくないです。また、道路の信号(歩行者用の信号)は、青になったと思ったら5秒ぐらいで点滅し始めてすぐに赤に変わってしまいます。これだと、信号に引っかかることも多いけど、またすぐに青になるので待ち時間が少なくてすみます。
 「待ち時間を少なくする」という考えはスポーツの中にもあり、バスケットボールの国際試合における30秒ルール(30秒以内にゴールに向かってシュートしなくてはならない)は、アメリカのNBAでは24秒ルールに短縮されて、その分、シュートの数が増えて観客が「得点シーンを待つ時間」を少なくしています。反対に、場合によっては90分で1点も入らないこともあるサッカーは「観るスポーツ」としては、アメリカではいまひとつ人気が無いことも「待つのが苦手」ということと関係があるのかもしれません。
 "Time is money"という意識が強く、時間が無意味に過ぎていくのをただじっと待つことに耐えられないのかもしれません。時にはその「耐え難く感じる気持ち」が、何か新しい物やシステムを生み出すモチベーションやヒントになることもあり、少なくともアメリカにおいては、「待つ時間」を実体のある何かに変える事の方が、じっと待つ忍耐力を身につけることよりも「良いこと」なのでしょう。