ペペロンチーノ

 東京の大学にいた頃、栄養学を専攻していた関係で調理学実習が必須となっていました。この授業の担当教授は男性で、助手も男性でした。この助手の男性は、教授の小間使い的な存在であり(助手というのは大抵そういったものなのでしょうが)、小柄であまりパッとしない印象であったことから、学生からもやや見下されているような雰囲気がありました。
 ある時、調理学実習の担当教授が所用でお休みした際に、この助手が代わりに授業を行う機会がありました。講義の後半になってから彼は、イタリアに調理の修行に行っていた頃に学んだというペペロンチーノをみんなの前で作り、食べさせてくれました。ペペロンチーノは、料理の本やクックパッドなどを見ると様々なレシピが載っていて、調味料や具材もバリエーションが広いようですが、その助手が作ったペペロンチーノは、多分これ以上シンプルなレシピは無いだろうというぐらいシンプルでした。まず、熱したフライパンにオリーブオイルを入れ、にんにくのスライスと鷹の爪を入れて加熱。にんにくと鷹の爪は具材ではなく、あくまでオリーブオイルへの香り付けが目的なので、焦げ目がつく前にフライパンから取り出します。そこへ、よい具合に茹でたパスタを投入しササッと炒めます。ここでもあまり炒め過ぎないように注意します。これで出来上がり。塩も胡椒も使わないのですが、これが不思議と美味しく、これまで小バカにされてきた助手でしたが、これを境に学生達から一目置かれるようになったのでした。
 学校から帰り、同じ方法で自分でも作ってみたのですが、何が違うのか、あの助手が作ったものほど美味しくは出来ませんでした。調味料を使わず、具材も入っていないので、料理の腕が如実に反映されゴマカシが効かないのでしょう。その後も、何度か挑戦してみたのですが、結局うまくいきませんでした。明日あたり、時間があれば久々に作ってみようかと思っています (^^)