梅雨入り

 朝は比較的気持ち良く晴れていたのですが、仕事を終えて帰る頃には割としっかりと雨が降っていました。もうあと暫くの間は爽やかな初夏の雰囲気を味わっていたかったのですが、東海地方は梅雨入りしました。このタイミングでの梅雨入りは平年並みで、昨年よりは17日遅いらしいです。

 通勤途中に降る雨を歓迎する気持ちには到底なれませんが、家にいる時に開けた窓から聞こえてくる雨音は好きです。雨の音というのは単調な水の音ではなく、自分の家の屋根に降る雨の音、隣の家の屋根に降る音、何十メートルも離れた家に落ちる雨の音、地面を叩く雨音、どこかの壊れた雨樋から滴り落ちる水の音、トタン板に雨粒が当たるパラパラという乾いた大きな音、樹木の葉に落ちた雨粒が発する柔らかい音、大きい音や小さい音、硬い音や柔らかい音が合わさったもので、一見無秩序な音源の集合体であるようでいて、全体としては大きなゆらぎを形成しており、そんな奥行きのある音のグラデーションに包まれていると次第に穏やかな気持ちになっていくのがわかります。
 暫く前に読んだ御手洗瑞子さんの『ブータン、これでいいのだ』の中にも、ブータンは木が多いので、アスファルトで覆われた東京とは違って雨の音が柔らかく、とても癒されるというようなことが書かれてあったのを思い出しました。
 心地良い雨の音が聞こえる場所というのは、よくよく考えてみるととても贅沢で恵まれた環境のように思えます。空気が綺麗だとか水が美味しいといったことと同じようなレベルで「良質な雨音が聞こえる」というのは住む場所を評価する上で重要なポイントかもしれないなあ、と極めて個人的には思ったりします。