オレゴンの大学院にいた頃、同じ研究室にアフリカのブルンジ共和国出身の女性がいました。彼女に会うまでは、ブルンジという国の存在さえ恥ずかしながら知りませんでした。ブルンジでは民族間(フツ族とツチ族)の対立が絶えず、内戦に発展することもあるなど政情が不安定で、経済的な基盤も弱く世界の中でも最貧国とされているそうです。
彼女自身も民族同士の抗争に巻き込まれ、文字通り命からがら出国し、各方面からの支援を得てオレゴンの大学院へやってきました。彼女は一家(旦那さんと子供2人)を支えるためにパートタイムの仕事をいくつかこなしていたので、勉学のための時間は限られていたと思うのですが、成績はとても優秀で、時々彼女が書いたペーパー(課題のレポートなど)を読ませて貰ったのですが、その内容の素晴らしさにいつも感嘆させられたものでした。
また彼女は思いやりのある、とても温かい性格の持ち主でした。彼女と私と韓国人の女性の3人でチームを組んで論文を書くための実験を長期間に渡って行ったのですが、彼女はそのチームの「お母さん的な存在」としてみんなをまとめてくれました。
しかし、私が大学院での勉強を終え日本に帰国してからは、最初のうちこそメールでのやり取りがあったものの、お互いの生活が忙しいこともあり、次第に疎遠になっていきました。
そうして何年かが過ぎ、彼女のこともすっかり忘れかけていたのですが、今日、いつも行くお気に入りのカフェでメニューの中にブルンジ産のスペシャルティコーヒーを見つけました。オレゴンでの彼女の記憶が蘇り、懐かしく感じたのでそれを注文しました。メニューに書いてある説明によると、ブルンジではUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)とミシガン州立大学の協力による農業プロジェクトが進められており、コーヒー生産の効率化、生産者の生活向上などが図られているとのことです。国内情勢が落ち着くと伴にこのプロジェクトが順調に進み、チェリーの香味や甘味が感じられる優しい風味のブルンジのコーヒーが、これからも安定して供給されることを願わずにはいられませんでした。