コーヒーの香りの効用

 昨日(10月1日)は「コーヒーの日」だったそうです。国際協定により新しい「コーヒー年度」が始まるのが10月1日で、更に日本では秋冬にコーヒーの需要が高くなることから、1983年に全日本コーヒー協会が定めたのだそうです。

 だからと言って、10月1日には全国的にコーヒー豆の半額セールが実施されるわけでもないので、一般消費者としては「ふ〜ん、そうなんだぁ」と思うしかないのですが、たまたま今読んでいる池谷裕二さんの『脳には妙なクセがある』という著書の中にコーヒーの香りに関する実験が紹介されていました。それによりますと、焙煎したコーヒー豆の香りを嗅ぐと、なんと他人に対して親切になるのだそうです。多くの買い物客で賑わう大型ショッピングモールで、炒ったコーヒー豆や焼いたパンの香りが漂っていると、見知らぬ人が落としたペンを拾ってくれたり、両替を快く引き受けてくれたりする確率が高くなることは以前から漠然と知られていたそうですが、1997年にバロン博士という科学者がこの現象を丁寧な実験で検証したのだそうです。詳細については省かれていましたが、コーヒー豆のような心地良い香りを嗅ぐと、それだけで相手に対して良い印象を抱くようになり、そしてそのポジティブな感情はそのまま「相手を手助けしたい」という心理に転じるのだそうです。
 また、ネズミを用いた別の実験では、睡眠不足によってストレスから脳細胞を守る機能が低下したネズミにコーヒーの香りを嗅がせると、部分的とはいえその機能が回復したのだそうです。ネズミなので人間のように「ああコーヒーの良い香りがするなあ」といった精神的なリラックス効果ではなく、薬理的影響である可能性が高いと解釈できるのだそうです。コーヒーといえばカフェインの作用ばかりが注目されますが、飲まなくても、その芳香にも作用があるというのはとても面白いと思いました。