今週のもう1冊 『ぼくがいま、死について思うこと』

ぼくがいま、死について思うこと

ぼくがいま、死について思うこと

 椎名誠の本は以前は新刊が出ると欠かさず読んでいたのですが、ここ数年は暫く前に読んだ『大きな約束』ぐらいで、あとはだいたい似たような内容の本ばかりでしたので、全く読んでいませんでした。
 しかし、この『ぼくがいま、死について思うこと』は、パッと見た感じがこれまでとはかなり違ってシリアスな雰囲気で、「ああ、椎名さんもそういう事について書く年齢になったのか」と興味をそそられたので読んでみました。
 
 内容は、椎名誠の死に対する考え方とか、それを踏まえた人生観のようなものが全編に渡って熱く語られているのかと思ったらそうではなくて、世界中を旅してきた椎名さんがこれまでに目にした各国の葬儀のやり方を比較文化論的にまとめたものが大部分であったのはやや肩すかしにあったように感じました。
 最終章あたりになってやっと彼の死生観について触れられていました。静かに語るような椎名さんの考えはしみじみとした深みがあり、心に響いてくるものがありました。