『往生写集』


 愛知県の豊田市美術館で開催中のアラーキーこと荒木経惟さんの写真展が間もなく終了するので慌てて観に行ってきました。写真展のタイトルは『往生写集』で、ポスター等に書かれているこの「往生写集」という文字はアラーキー自身が書いたもののようです。
 展示内容は、デビュー作『さっちん』をはじめ、主に人物を写した作品で構成されていました。一部を除いてほとんどがモノクロの作品で、モノクロの力強さや表現力の豊かさをあらためて思い知らされました。
 アラーキーが撮った人物写真は、例えばスタジオの白いホリゾントの前で撮っただけの何の変哲もない写真のように見えながら、決して他の人にはマネの出来ない作品に仕上がっているところが、どうにも凄いなぁと感じてしまいます。それは多分、アラーキーのあのキャラクターによってその被写体がもつ何かが引き出され、その瞬間を逃さずにシャッターを切っているのでしょうね。
 
 油絵とか日本画などの絵画の場合は、雑誌などの写真でしか見たことなかった作品のオリジナルを生で見ると、それなりの感動があるものなのですが、それに比べると今回の展示のように、もともとの作品が写真の場合は生で見ることの感動が幾分小さいかもしれません。しかし、今までに見たことがある作品であっても、あるひとつのテーマに沿って並べてあるとそこにストーリーが生まれ、今までとは違った側面から写真家アラーキーを感じることが出来るという発見があったことは私にとっての収穫でありました。