一夫多妻制

 暫く前に読んだ『服従』という本は、フランスでイスラム政権が誕生するという話で、その中でイスラム関係者から主人公である大学教授が一夫多妻制について説明を受けるシーンがありました。イスラムでは、全ての妻を平等に扱うという条件で、四人まで妻をめとることが出来るとのこと。まあ、日本でも大昔は大名がたくさんの側室を持っていたり、明治以降も妾を持っている人がいたので、複数の妻を持つことは、それなりに社会的な理解を得ていたのかもしれません。しかし、『服従』によると、たくさんの妻を娶ることが出来る男性はそれだけ社会的な地位が高くて収入も多く、そうなるためにはやはりそれなりの高い知性が必要となり、そういった男性が複数の妻を持つことによって優秀な遺伝子をより多く次世代に残していくことが真の目的であるらしいのです。周囲を多くの国や民族に囲まれていて、いつ敵に襲来されるかわからないような国々にとっては、そうやって「優秀」な遺伝子を残して国家としての力を高めていくことには一理あるのかも知れません。しかしながら、知性の高さは「優秀」であることの一側面にすぎず、本来はもっと多くの観点から評価されるべき多様性を内包したものであるはずであり、「知性」という基準だけでそれ以外のものを切り捨ててしまうことが果たして本当にその民族にとっての真の幸福に繋がるのかは疑問であるように感じます。