今年最後のバー

 30日からやっと年末年始の休暇に入りました。午前中からお昼過ぎまでは家の中の掃除を少しして、その後は予約してあった美容室でカットとヘッドスパ。髪の毛は前回カットしてからまだ3週間しか経っていないので、そんなに伸びてはいないのですが、やはりサッパリとした頭でお正月を迎えたいので、少しだけカットして整えてもらいました。

 「それでは良いお年を」と言って美容室を出たのが夕方4時。何だかちょっと美味しいシングルモルトウイスキーでもすすりながらぼんやりした気分でしたので、いつもの(と言っても年に数回しか行きませんが)バーへ行きました。このお店はまだ明るい夕方4時から開いているので嬉しいです。ドアを開けて中へ入ると静かにジャズが流れる店内に客はおらず、マスターがカウンターの内側でせっせと仕込み作業をしておりました。私はいつものようにカウンター席に腰を下ろし、かねてから気になっていたラフロイグのアンカンモアを注文しようとしたのですが、あいにくと「うちには置いてません」とのことでしたので、先日観た映画の中に登場したダルモア(12年)をストレートで頂きました。これはバランスのとれた優雅な風味でしたが、やはりちょっと物足りなかったので次はアイラモルトを味わいたくなり、ラガヴリン(16年)とカリラ(12年)を続けて頂きました。う〜ん、やはりアイラモルト特有のスモーキーな風味がたまりません。以前、他のお店へ行った際にそこのマスターから「初めからアイラモルトばかり飲んでいると、それ以外のウイスキーを楽しめなくなってしまいますよ」というアドバイスをもらい、その時は「そんなことはないんじゃないの」ぐらいの軽い気持ちで聞き流していたのですが、気が付いてみると私は既に「アイラ以外のウイスキーが楽しめない体質」になってしまっていました。正直なところ、この日の一杯目に飲んだダルモアは極端に言えば「これはウイスキーじゃない」とさえ感じました。このまま私はアイラの世界に引きずり込まれて二度と帰ってこれなくなってしまうのかもしれませんが、まあそれも良いのかもしれません。とことんアイラと付き合ってやろうと思いました。

 さて、今回はウイスキーを飲みつつ、以前読んだことのある『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』という村上春樹の本(文庫)を読みました。シングルモルトの聖地とも言えるスコットランドアイラ島へ行き、現地でアイラモルトを味わったり製造工場を見学したりという内容のエッセイです。この本を初めて読んだ時はまだウイスキーにそれほど興味があったわけではなかったのでピンとこなかったのですが、ウイスキーの味が少し分かるようになり、しかもお気に入りの静かなバーでアイラモルトを味わいながらあらためて読むと、まさしくウイスキーが体に染み込んでくるがごとく村上春樹の文章が伝わってくるのを感じました。こういう飲み方をまたしたいです。

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)