昨日の記事に書いた『窓際のスパイ』の著者はイギリス人で、ちょっと前に読んだ『その女アレックス』と『死のドレスを花婿に』というミステリーの著者のピエール・ルメートルはフランス人、そして今現在読み進んでいるのがデンマーク人が書いたミステリー小説です。どれも面白いのですが、必ずしも全ての作品の全てのページが波乱に富んだ出来事で満ちているわけではありません。読み終わってから思い返してみると、ミステリー小説のキモであるトリックがそれほど独創的でない場合もあったりします。しかし面白いと感じてしまうのは、そこに描かれている人間に魅力を感じたり、同情したり、共感したりするからだと思います。遠い異国の物語だけど、そこにいるのは自分と同じ人間なんだというバイブレーションを感じます。
一方、アメリカにおけるこのジャンルの小説はどうかというと、個人的にはそれほど面白さを感じないことが多いです。というのは、ヨーロッパの小説に感じたようなバイブレーションが感じられなくて、そこには誰がどこへ行って何をした、という出来事がただ機械的に並んでいるだけで、人の情や温もりが無いからです。
映画においても同じような傾向は見られ、高尚な芸術作品ではなく、アクション映画のようなものにおいてさえ、フランス人のリュック・ベッソン監督が創ると、映画自体は低俗であろうとも、そこには人間の情が織り込まれています。ところがハリウッドのアクション映画はそうではなくて、ただアクションシーンがあるだけという感じです。家庭内の問題や家族の絆みたいなものを描いたシーンもあるにはあるのですが、そういったシーンの必然性が見いだせなく、ただ既にある「定型」をはめ込んだだけという感が否めないことが多いと言えましょう。映画を構成する要素に人間味に溢れるものが無いため、その空白を埋めるかのようにたくさんの銃弾が飛び交うようなシーンがこれでもかというくらいに詰め込まれているのかもしれません。
さて、現在読んでいるデンマークのミステリーはシリーズ物で、それを読み進みたい気もしますが、何年か前から「北欧ミステリー」がブームとなっているため(きっかけは『ドラゴンタトゥーの女』か?)デンマーク以外の北欧諸国のミステリーも翻訳が増えてきているので、そちらも読んでみたい気がします。