『劇場』

 暫く前、書店へ行って買うつもりだった本を棚から取り出してレジへ向かう途中、平積みされていた『劇場』という小説の文庫本が気になったのでそれも一緒にレジへ持っていきました。『劇場』は又吉直樹さんの作品で、又吉さんと言えば芥川賞を受賞した『火花』が話題になりましたが、書き始めたのはこの『劇場』の方が先だったそうです(書き終えたのは『火花』の方が先らしいけど)。

 大阪から上京し下北沢で劇団を旗揚げして脚本を書いている永田という男が、秋田から上京してきた大学生の沙希と出会ったところから物語がゆっくりと進み始めます。やがて永田は沙希の部屋へ転がり込みますが、ほとんど稼ぎの無い永田は食べるものから光熱費に至るまで何から何まで沙希のお世話になるヒモのような存在になり、そんな永田を沙希は献身的にサポートします。色々ありながらもこのままハッピーエンドまで持ちこたえてくれ、と読者としては祈るような気持ちでページをめくっていったのですが・・・。

 私が普段よく読むアクション小説と違って、この小説の中では銃弾は1発も飛び交いませんし、血を流しながら誰かが倒れて息絶えるシーンもありませんが、むしろこういう恋愛小説の方がある意味残酷でもあり、鋭利なものが胸にグサリと突き刺さってくるのを感じました。

 この小説を読みながら沙希のキャラクターは誰かに似ているなぁと思っていて、途中でそれが『のだめ』だと気が付きました。この小説を映画化するなら沙希役は若い頃の上野樹里ならぴったりかもなと思いました。しかし既に映画化されていて、沙希役は松岡茉優とのこと。松岡さんもとっても素敵な女優さんだとは思いますが、小説の中の沙希とはちょっとイメージが違うような気がします。映画は当初は勿論映画館で公開される予定でしたが、新型コロナの影響でネット配信になったようです。アマゾンでプライム会員なら追加料金無しで視聴出来るみたいなので、近いうちにそちらも観てみたいです。

 ところでこの文庫本はカバーが2枚重なっていて、もともとのカバーは↓こんな感じ。

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映画の販促として上から被せてある2枚目のカバーが↓こちら。

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その裏表紙もイイ感じ。

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