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ゴーストマン 時限紙幣 (文春文庫)

ゴーストマン 時限紙幣 (文春文庫)

 『ゴーストマン 時限紙幣』というクライム(犯罪)アクション小説を読みました。この本は単行本でも文庫版が出てからもずっと書店で平積みされていて、「21世紀になってから最高の犯罪小説」などと宣伝されていましたし、アマゾンのレビューでも高い評価でしたので、気になってはいたのですが、やっと読むことができました。
 アメリカでは、連邦準備銀行が各地の銀行から古い紙幣を回収し、新しい紙幣と交換して配布するシステムになっているのですが、その配布される新しい紙幣が強奪されてしまいます。しかし、こういう新しい紙幣にはGPS付きの「インク爆弾」が仕掛けられていて、強奪されてしまってもGPSで追跡されて、決められたエリアから外へ出たり、決められた時間内に解除しないと、インク爆弾が爆発してお札が使い物にならないようになっています。こういった紙幣を何とか強奪した犯人ですが、実はこの作戦には別の思惑があって、話がこじれて思わぬ方向へ進んでいきます。

 全体を通して、まあまあ面白くて、インク爆弾が仕掛けられた紙幣を盗むという着想は斬新だし、物語の前半はグイグイと引き込まれていくのを感じました。しかし、後半になると主人公が駆け出しの犯罪者だった頃のエピソードが1章おきに語られ、読んでいてそこでリズムが中断されてしまいました。こういう小説はテンポが大事なのに、物語の構成が良くなくて残念でした。

 とは言え、この作者の作品をもう少し読んでみたいと思って調べてみたら、続編が出ていました。しかし、作者であるロジャー・ホッブスは、25歳でデビューして、この『時限紙幣』で英米の賞を総なめにして益々の活躍が期待されていたのですが、3年後に28歳という若さで急逝してしまいました。出版された本は結局2冊だけで、誠に残念。