初時雨 猿も小蓑を欲しげなり

モンキーズ・レインコート―ロスの探偵エルヴィス・コール (新潮文庫)

モンキーズ・レインコート―ロスの探偵エルヴィス・コール (新潮文庫)

 暫く前に読んで割と面白かった『時限紙幣』という小説の作者(ロジャー・ホッブス)のインタビュー記事をネットで読んでおりましたら、影響を受けた作品として『モンキーズ・レインコート』という作品を挙げていました。それがどんな小説なのか気になったので買おうとしたのですが、既に絶版となっていて書店では手に入らなかったので、古本をアマゾン経由で購入しました。
 主人公は、ロサンゼルスの私立探偵エルヴィス・コールで、行方不明の捜索を依頼されるところから物語は始まります。行方不明者の足取りを辿っていくうちに、裏社会の麻薬組織との繋がりが浮かび上がってきて、主人公も事件の中にどっぷりとはまってしまうのですが、最終的には窮地を脱します。
 ロサンゼルスらしい、けだるい感じのするストーリー展開でしたが、最後の50ページぐらいの戦闘シーンが、アクション小説好きの私にとっては一番楽しめました。
 ただ、翻訳があまりよくなくて、例えば、アイスクリーム屋のバイトの若い女の子が出てくるシーンでは、その女の子を「おぼこ」と表現していましたが、「おぼこ」なんて言葉は普通はあまり使わないでしょうに。少なくとも、ロサンゼルスの青い空の下のシーンには全く似つかわしくありません。それから、ヘッケラー&コッホというドイツのサブマシンガンのことを「ヘクラー&コーク」と書いてあったのも、ひどいなぁと思いました。

 さて、タイトルの「モンキーズ・レインコート」は松尾芭蕉の「初時雨 猿も小蓑を欲しげなり」という俳句から取られていることを、小説の本編の後の解説を読んで知りました。「そういえば確か・・・」と思って、本の一番初めのページをもう一度見て見ましたら、「冬のどしゃぶりに 猿ですら レインコートをほしげにしている バショウ」と書いてありました。このページには勿論目を通していたのですが、五七五でもないし、カタカナで「バショウ」と書いてあるので、松尾芭蕉だとは気がつかずにスルーしてしまっていました ^^;) 「バショウ」っていうのは、例えば「レオナルド・バ・ショウ」みたいな名前の外国人だと勘違いしてました。