戌年に読む犬の本

戦場に行く犬: アメリカの軍用犬とハンドラーの絆

戦場に行く犬: アメリカの軍用犬とハンドラーの絆

 先日、会社帰りに名古屋駅前の書店へぶらりと入りましたところ、平積みにしてあった『戦場に行く犬』という本がたまたま目につき、面白そうだったので購入しました。兵士と一緒に戦地へ赴き任務に参加する軍用犬の実態が書かれている本です。「面白そう」とは言うものの、犬が戦場で酷い死に方をしたり、まるで消耗品の用に扱われて役に立たなくなったら捨てられたりといった事が描かれていたら読むのが辛いだろうなという危惧もありました。ところが、そんな心配は全く不要で、とても面白い内容でした。普通の飼い犬とは全く違う世界で生きる軍用犬の実態に関する記述はそれはそれで面白いのですが、犬の生態とか嗅覚がいかに優れているかについて解説されている部分は、科学の読み物として大変興味深いものがありました。

 軍用犬と一口に言っても、任務によっていくつかの種類の犬が採用されるそうで、例えば潜水艦の中に仕掛けられた爆発物の探査には、狭い場所にも入っていけるジャック・ラッセル・テリアのような小型犬が使われたりしますが、アフガンなどの過酷な戦場へ行くのはやはりジャーマン・シェパードやダッチ・シェパード、ベルジアン・マリノワが多いそうです。これらの犬は米国内のブリーダーが繁殖させたものを軍が買い上げるのかと思ったらそうではなく、ほとんどがヨーロッパから買い付けてくるらしいです。

 この本には、軍用犬とペアを組む兵士との深い絆についても随所に書かれているのですが、これがなかなか感動的なのです。軍用犬が負傷したり、あるいは高齢となったために引退すると、その犬とペアを組んでいた兵士がその犬を引き取って自分の家で飼う例が多いそうで、これはもしかしたら所謂「吊り橋効果」的なものが兵士の心理に影響を及ぼしていることも少しはあるのかもしれませんが、危険と孤独の中でもいつも傍にいてくれる犬と精神的な繋がりが強くなるものなのでしょうね。

 この本を読み終えて、読む前よりも一段と犬のことが好きになっていました。読んでいる途中、時折ページをめくる手を止め、目を閉じて自分が犬を飼っているシーンを想像(妄想?)してみたりするのも、映画やテレビドラマを観ている時には無い、読書独特の楽しいひと時でした。

 この本の著者のマリア・ダッグヴェイジという女性は、全米で多くの愛犬家が閲覧する犬のサイトDogster.comの編集者とライターをしていますので、御興味あれば御覧になってみてください(英語ですけど)。
 
 「戌年に読む犬の本」として読みたい本は他にも何冊かあります。しかし、ただでさえ時間が無い上、他にも読みたいジャンルの本がたくさんありますので、そんなにたくさんは読めないでしょうけど、年内にあと2〜3冊は読みたいです。