『大統領失踪』

 読みたい本は常にたくさんあれど、読書に当てる時間を充分に確保できないので、全てを読むことはできません。取り敢えず買って手元に置いておくという方法もありますが、不思議なもので、買って暫く時間が経つと、まるで冷蔵庫から出した果物や野菜が新鮮さを失っていくように「読みたい」という欲求があれよあれよという間に弱まっていき、そんな本よりもまだ買っていない別の本に興味が移っていってしまい、結局「積読」という末路を辿ることになるのでした。そういう事態を避けるために、最近は読みたい本が書店の棚に並んでいるのを見かけても、ぐっと堪えてすぐには買わず、時間的に確実に読めそうになった段階で買うようにしています。

 そうやって、暫く前から私の頭の中の「次に読みたい本のリスト」に載っていた『大統領失踪』という小説をやっと最近になって購入しました。上下巻のうち取り敢えず上巻だけを読んだのですが、これがなかなかの出来栄えでした。初めの方は大統領の政治家としての日常が長々と書かれていてやや退屈でした。あのビル・クリントンがこの作品の共著者で、恐らくはホワイトハウスの内部や日々の執務の様子などは大統領をはじめとするホワイトハウスの内部にいたことがある人しか知らないことも多々あるのでしょうけれど、冗長である感は否めません。しかし、140ページあたりからこの物語のアクション小説的な部分が動き出して、そこからは俄然面白くなりました。アメリカ大統領がホワイトハウスを抜け出して自ら問題解決に当たるわけですが、この大統領が特殊部隊出身で、敵との立ち回りも自分でやっちゃうあたりは、いくらなんでもその設定はちょっと無理がなかろうかと思うものの、斬新な感じはします。下巻ではどんな展開が待っているのか楽しみです。