夕刊の一面から

 生体認証の脆弱性については随分前から指摘されており、今に始まったことではないのですが、12/7(土)の日経新聞(夕刊)の一面トップは、SNSにアップされた高画質の写真が悪用される危険性について警告する記事が載っておりました。土曜日の午後なんて政治や経済で世の中が大きく動く出来事が無いので、こんな記事がトップになるのかもしれません。その記事によりますと、インスタなどでカメラに向かってピースサインをしている写真の指の部分を拡大して、誰でも使える画像ソフトで処理を施して指紋の線を抽出し、スタンプを製造する市販機器にこのデータを読み込ませて素材を加工すれば指紋の溝が再現された偽の「指」が出来上がり、例えばこれを使って建物の入口のロックを解除して侵入することも可能になったりします。また、SNSにアップされた顔が写っている写真の瞳の部分を拡大し、そこに写り込んでいる周囲の様子から場所を特定することも場合によっては可能だそうです。撮影場所が特定されただけで、それがすぐさま困った事態に繋がることは一般人では少ないかもしれませんが、アイドルなどの芸能人だとそれがストーカー被害に繋がりかねず、実際に事件になったことがあります。その事件では、瞳に写り込んだ風景の特徴からその女性アイドルの最寄駅を特定し、そこで待ち伏せして自宅まであとをつけていって犯行に及んだのでした。これも朝から晩まで駅で待ち伏せするとなると大変ですが、ツイッターやインスタやフェイスブックに上げられている断片的な情報を繋ぎ合わせればその人物の凡その行動パターンが把握されてしまいます(これは「モザイクアプローチ」と呼ばれています)。指紋の溝にしても、瞳に写り込んだ風景にしても、昨今の画像技術の進歩によるものですし、いずれも合法的に入手出来る機器や公開されている情報を使って、その気になれば誰にでも出来てしまうところが恐ろしいです。