生物学探偵

 

 時々行く大型書店の地階は文庫本売場になっていて、新刊の文庫は表紙が見えるように棚に並べてあります。そこをざっと見ていて面白そうだと感じて先日手に取ったのが『生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者』という推理小説でした。主人公は大学で生物学を研究しているセオ・クレイ教授。彼の教え子の学者が森林でのフィールドワーク中に熊に襲われて命を落としたという知らせが入り、地元警察に事情を訊くけれど、どうも腑に落ちないところがあるので、彼の専門分野の生物学で使う調査の手法を応用して独自で調査を行い、今まで闇に葬られていた事実にどんどんと近づいていく、というストーリーです。読んでいて次にどうなるのかが知りたくてページをめくる手が止まらない状態でした。物語終盤までにいろんな人物が登場し、実はこいつが犯人だったのだ、と読者を驚かせてくれることを凄く期待していました。お決まりのパターンとはいえ、読者はそれを楽しんでいるものです。しかしこの作品においては、残り僅かになって急に新しい人物が登場してそいつが犯人だということになって、何だかちょっとそれはないんじゃないのと思ってしまいました。でもまあ、全体を通してよく出来たストーリーでしたし、欧米独特のユーモアのセンスが至るところに散りばめられていてクスッと笑えたし、翻訳も上手かったので読んでいて楽しかったです。このシリーズはもう1作邦訳されているので、いずれ読んでみたいです。