金継ぎ

 最近はそういう報道は見かけなくなりましたが、何年か前まではノーベル文学賞が発表される日の夜に村上春樹のファンたち数名が集まるカフェが東京にあって、村上春樹が今年も取れなかったという結果が出ると、報道陣からマイクを向けられた村上ファンが今の心境を語るというシーンが毎年ニュース番組で見られました。そこは荻窪にある『6次元』というブックカフェで、ナカムラクニオという方が運営されています。村上関係の情報を何か得ることができればという思いから、私はナカムラクニオ氏のツイッターアカウントを数年前からフォローし始めました。ところが、村上関係の情報が書かれていることはほぼ無くて、ツイートの多くは『金継ぎ』に関するものでした。金継ぎとは、割れた陶磁器の茶碗や皿などを漆で繋ぎ合わせ、その繋ぎ目を金などの金属粉で仕上げるという修復技法の一種です。一般的に修復されたものというのは、割れたり欠けたりする以前の完全な状態の陶磁器に比べたら価値が劣るのは当たり前だと思っていたのですが、金継ぎされた器を見ると、それはそれで、割れる前には無かった独特の味わいが出てきていることに不思議な魅力を感じるようになりました。

 その金継ぎ作品を数多く集めた『金継ぎアンソロジー』という展覧会が10月20日から11月28日まで開催されるとの情報がナカムラ氏のツイッターに載っていました。これは一度見ておきたいものだなぁと思って開催場所を見ると東根市とありました。東根市って何県?と思って調べてみたら山形県でした。関東や関西ならともかく、山形県はさすがにちょっと遠いなぁ・・・。行きたいのはやまやまだけれど、今回は残念ながら行けません。この展覧会が好評を博して、別の地域でも開催されることを願っております。