仕事帰りに駅前の大型書店へ寄ると、まずは入口を入ってすぐのところの新着本のコーナーで立ち止まります。しかし、ここに私が好んでよく読むような本が置いてあることはまずないので、世の中では今どんな本が出版されているのかというトレンドを探るためにざっと見渡す程度です。そして次に海外文学の単行本の棚へ移動し、端から順に見ていくわけですが、海外の作品を翻訳したものは1冊二千円台後半〜三千円と高いのは仕方がないとしても(翻訳に関わる費用が加算されるので)、分厚くて重たいものが多いので通勤途中に読む本には向いていません。従って、よほど「すぐに読みたい!」という本でなければ買うことはありません。そして次に文庫本の棚へ向かいます。ここでようやく買う本を選ぶことになるのですが、ここでも海外の翻訳小説を中心に見ていきます。主に出版されてからまだ日が浅くて平積みされている本を見ていき、まだ読んだことが無い作家の作品も多いので、帯に書かれている「◯◯賞受賞!」みたいな宣伝文句を頼りにして、そこで興味を惹かれたらスマホでアマゾンのレビューを確認し、面白そうであれば買うことになります。こういう書店における本選びの流れが確立して久しいのですが、そうやって最近購入したのが『影のない四十日間』というミステリー(推理小説)の上巻。北欧のノルウェー、フィンランド、スウェーデンの国境を跨いで活動する特殊警察のお話です。どう特殊な警察なのかというと、ここで登場するのは「トナカイ警察」というトナカイ関連の事件を専門に捜査する警察組織です。トナカイの放牧を行なっているのは主にこの地域に昔から住んでいる先住民族で、国境ができる以前から代々トナカイの放牧を行なってきました。彼らの行動範囲は国境を跨ぐことになり、そこで発生した事件を捜査するには国家単位の警察では対応が難しい面もあるので、国境と関係なく捜査活動ができるトナカイ警察が組織されました。「トナカイ」というと「サンタクロースのソリを引いている動物」ぐらいの知識しか持ち合わせておらず、のどかで平和的なイメージがあるので「トナカイ警察」の仕事も牧歌的なんだろうなという先入観があったのですが、実際に読んでみると民族問題がらみのドロドロした世界で、そういう問題というのはどこにでもあるものなんだなぁと思いました。上巻ではまだ事件の真相の周りをぐるぐると回っているような感じで、ストーリーの進行が遅くて焦ったいので、もう読むのをやめようかと思ったりもしましたが、やはりその後の展開が気になるので下巻も読むことにしました。果たしてどんな結末が待っているのか、おそらく丸く収まってハッピーエンドみたいなことにはならず、北欧特有の陰鬱としたやりきれない感じになる可能性も高そうですが、取り敢えず読み進みます。