オールブラックスの敗退

 事実上の決勝戦と言われていたラグビーW杯準決勝でニュージーランド代表オールブラックスイングランドに7-19で負けてしまいました。私はオールブラックスを応援していましたし、試合前の予想では大差で勝つものと思っていましたし、試合開始早々にイングランドにトライを決められた後も、イングランドは最初から全力を出し切っている感じなので後半には体力が消耗して足が止まり、そこをオールブラックスが攻めて逆転して突き放すだろうと楽観的に考えていました。こういう展開、つまり「後半になって足が止まってしまう」というのはサッカーではよくあることです。しかし、イングランドの足は止まりませんでした。止まるどころか、フォワード陣はまるでバッファローのような力強さで押しまくりました。こういうのは「たまたまその日の調子が良いから」というものではなく、何年もかけて積み上げてきたトレーニングの成果であり、だからこそ相手チームはどうあがいてもそれを覆すことは出来ないのでした。ラグビーファン初心者である私は「ディフェンスはフォワードが担当して、得点するのはバックス」という単純な図式を思い描いていました。サッカーの場合はフォワードが攻めて後ろにいる選手が守るのでラグビーとは逆の布陣ですが「攻撃」と「守備」の役割が比較的はっきりと分かれています。しかし、ラグビーでは守備と攻撃が一体化しているというか、守備自体が攻撃の一部になっており、攻撃の起点が守備になっています。起点となるフォワードで負けてしまえば攻撃に繋がらず得点することも出来ません。ラグビーにおけるディフェンスの重要性を目の当たりにした試合でした。

 随分前のブログに書いたことがありますが、スポーツにおいて、トップに君臨する者(あるいはチーム)は、常に追われる立場にあり、2位以下のチームは、いかにして1位のチームを打ち負かすかを考えて戦略を立てるのに対して、1位のチームは戦略を変えないことが往々にしてあります。例えば、2010年のサッカーW杯でスペインはスピードのある細かいパスを回すスタイルで優勝しましたが、2014年のW杯では各国がスペインの「パスサッカー」に対抗する戦術を準備してきたため、スペインは1次リーグで敗退してしまいました。そうやって「新しい戦術が生まれては、次の世代がそれを凌駕する戦術を生み出す」という新陳代謝を繰り返しながらそのスポーツ全体が進化していくものです。今回のラグビーW杯でオールブラックスが負けたのも、ラグビーというスポーツの進化の過程であると言えましょう。この敗戦を踏まえオールブラックスが生まれ変わり、4年後のW杯ではバージョンアップしたチームになっていることを楽しみに待っていたいです。