追記:シャーロック

 BBCのテレビドラマ『シャーロック』を面白いと思った理由は、脚本や演出が優れていることも勿論ありますが、主役を演じているベネディクト・カンバーバッチを見るのが私にとって初めてで、彼が出演した他の作品のイメージに影響されることが無かったので、「素晴らしく頭がキレル人物」というキャラ設定を抵抗なく受け入れてストーリーに入っていけたことが大きいと思います。

 「頭がキレル人物が難事件を解決していく」ドラマと言えば、3年ほど前にTBSで放送された『MR.BRAIN』も面白かったですし、主演のキムタクも素晴らしい俳優さんだとは思うのですが、どうも他のドラマやバラエティ番組を通して得たキムタクのイメージが強すぎて、それらを振り払ってお話の中へ入っていくことが出来ませんでした。

 あるいは、似たようなジャンルの作品でいえば、織田裕二が頭脳明晰でハードなアクションもやってのける敏腕外交官を演じた映画『アマルフィ 女神の報酬』とその続編なども、たいへん面白かったのですが、織田裕二が眉間に皺を寄せたりしてどんなにシリアスでハードボイルドな雰囲気を出そうとしたところで、青島刑事とか目薬のCMで「きたぁ〜っ!」と叫んでいるイメージが頭のすみの方でチラチラしてしまいました。

 ひとつのドラマや映画の中で演じることによって形成されたイメージというのは、その俳優にとっての”財産”であり、そうしたイメージをうまく利用しつつも新たな何かを積み上げていくというのが役者という稼業のある一面だと思うのですが、キャリアを積んで”財産”を増やせば増やすほど、引きずるイメージも大きく重たいものになっていき、それが新しい何かを積み上げる際のジャマになるという現象は、俳優当人にとってはジレンマなのでしょう。

 ベネディクト・カンバーバッチは、『戦火の馬』などの映画にも出演しているそうですが、今のところはそういった他の作品は観ないで『シャーロック』のイメージを大切にしておいて、シーズン2やシーズン3(?)を観ていきたいと思っています (^^)