今週の1冊 『それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと』

それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと

それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと

 ハーバードに留学した人が書いた本はたくさん出されていて、私も何冊か読んだことがあります。「ハーバード」という文字がタイトルにあると「どんな本なんだろう?」とつい手に取ってしまいますし、この手の本のタイトルに「ハーバード」と入れることは出版社サイドとしては売上を上げるための営業戦略としても重要なのだろうと思います。

 これまでに読んだハーバード系の本の著者は、だいたい「東大→ハーバード→マッキンゼーでバリバリ活躍」みたいなパターンが多く、「ふ〜ん、世の中には凄い人がいるんだなぁ」と感心こそするものの、そこから学び得たものを自分の人生をより良くするために役立てるにはこの本の中の人たちはあまりにも「別世界の人」でした。しかし、今回読んだこの『それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと』の林英恵さんは、勿論非常に優秀な方なのではありますが、数々の困難に直面し何度も挫折感を味わうというプロセスに共感しましたし、そんな状況にありながらも驚異的なネバリで努力を続けて最後には目標を達成する姿に感動を覚えました。

 また、ハーバードというと非常に頭の良い学生ばかりで、それこそ「上位1%(あるいは0.1%?)」的な社会的なポジションを約束されたエリートであり、卒業後は大手の企業に入るか自ら起業してバンバン稼ぐ、といった印象を持っていました。そういう側面も確かにあるのでしょうが、今回のこの本の中には「この世界をより良いものに変えていこう」という大きな志を持った学生達がたくさん登場し、ハーバードに対するイメージが変わりました。日本の大学でも「グローバル」というキーワードが含まれる理念はしばしば耳にしますが、実際にはせいぜい「日本をより良いものに」というものであり、大部分は「卒業後に自分はちゃんと就職できるか」が最大の関心事であり、「世界をより良く」なんていう志が育つ環境ではないのが現状ではないかと思います。こういう志の違いが生じる要因は何なのか、親の教育が良かったのか、宗教的な教えも関係があるのか、などといったことにも興味が湧いてきます。