文字の入れ違い

 3日前に書いた『悲愴』という記事を読み返してみましたら、「言葉からは〜」とすべきところが『言葉らかは〜』となっていました。こういう風に単語の中の文字の順序が入れ替わってしまうことは滅多に無いけれど、全く無いわけではありません。急いでキーボードを叩いているとつい指が先走ってしまうようです。これはキーボード入力に限った話であって、手書きでは無いですし、話し言葉においても起こりません。ただ、小さな子供の場合は、話し言葉で起こることも珍しくないようで、例えば「おくすり」のことを「おすくり」と言ったり、「しずかちゃん」のことを「すじかちゃん」と小さな子供が言っているのを耳にしたことがあります。繰り返しますが、こういう現象は小さいな子供に特有のものであって、大人では起こりません。私自身も大人になってからそういった文字の入れ違いが話し言葉で起こったことはありませんでした、つい先日までは・・・。

 先日、ある大型書店で本を2冊ほど買おうとしてレジへ向かいました。対応してくれた店員さんは、ショートカットで肌が透き通るように白く、整った顔立ちの美しい女性でした。ああなんて綺麗な人なんだろう、と内心で思いながらもそんな気持ちは一切表情に出さずに私は平静を装っていました。その店員さんの胸元には名札が留めてあり、そこには「小倉」と書かれていました。あんこ大好きな私にとっては何とも魅惑的な美味しそうな響きの名前。食べてしまいたいくらいだなぁ、などと妄想している間に本にカバーを付ける作業が終わり私に手渡される段階になりました。私は本を購入する際にはいつも紙のシオリをもらうようにしています。帰りの電車の中ですぐに読み始めるのですが岐阜へ到着するまでの30分間では読み終えることが出来ませんのでシオリが必要になってくるからです。その日もいつものように「シオリください」と言おうとしたのですが、私の口から出てきた言葉は「オシリください」でした。美しい女性を前にして緊張していたのか、文字が前後入れ違ってしまいました。店員の小倉さんは一瞬「えっ?」みたいな顔をしましたが、すぐに間違いに気が付いたようで何事も無かったかのように「どうぞ」と言いながらシオリを渡してくれました。大人になってからは全く無かった言葉の文字の入れ違いが、なんでよりによってこういう状況で起こるのかなぁ、と驚いたり恥ずかしかったりした出来事でした。