通勤路ですれ違う人とか

 朝、会社へ行く途中の道で、だいたいいつも同じような人と同じ場所ですれ違います。ただすれ違うだけなので、その人達の名前は知りませんし、挨拶を交わすことなど勿論ありません。いつもと少しズレた場所ですれ違ったりすると、あれっ、この人は今朝は少し家を出るのが遅かったのかな、とか思うことはありますが、親しみを感じるまでには至りません。唯一、親しみを感じることがあるのは、犬を連れて朝の散歩をしている犬(飼い主ではなくて)です。と言っても「おぉ、よしよし」と言いつつ犬の頭を撫でるようなことはしませんけど。そうやってすれ違う犬は何匹かいて、一番印象的なのは、飼い主の肩の上に担がれている犬でした。担いでいるのは年配の男性で、担がれているのは割と大きな犬で、もうだいぶ歳をとっているように見えました。かつては元気に、リードをグイグイと引っ張っていたのでしょうけど、老犬となって歩けなくなってしまったのかもしれません。それでも一緒に散歩をしたいので、まるで10キロ入りの米袋を担ぐようにして、朝の日課を黙々とこなしているように見えました。そして、先日、いつもの場所でその飼い主とすれ違ったのですが、もう犬を担いではいませんでした。たまたまその日だけかと思ったら、それ以降、二度とあの犬を目にすることはありませんでした。心情的には、あの犬は天国へ行ってしまったのですか、とその飼い主(だった人)に尋ねたくなってしまいますが、流石にそれはちょっといけないだろうな、と思うので、ただただ心の中で手を合わせて冥福を祈るばかりでした。