イタリア人

 UCLAの英語学校の授業で、2人1組になって教室の外へ出て、通りがかりの人にインタビューするという課題がありました。30分間に3人を呼び止めて、決められたトピック(カルフォルニア州の政策についてだっと記憶しています)に対する意見をきかせて貰い、その後教室へ戻って皆の前で発表するというものでした。私はイタリアからの留学生(男)とペアを組むことになりました。教室から出て、カルフォルニアらしい明るい日差しの下を足早に通り過ぎて行く人々を眺めながら、果たして私の英語が通じるのか、相手の言うことが聞き取れるのかが心配になって、なかなか踏み出せないでいる私に、そのイタリア男は「さあ、行こうぜ!」と声を掛けると、臆することなく進んでいき1人の女性を呼び止めました。その女性は、スラッと背が高く、白のブラウスに身を包んだ美しい人で、UCLAロースクール法科大学院)の学生でした。ただでさ緊張しているのに、こんな綺麗な女の人を前にしてドギマギしている私を尻目に、そのイタリア男はどんどん話しかけていきました。しかも、授業の課題であるカルフォルニア州の政策についてではなく、「彼氏はいるの?」などといった彼女のプライベートに関する質問ばかりで、当然のように電話番号まで聞き出してしまうし、最終的には「今度の土曜日にパーティーがあるんだけどさぁ、一緒にい行かない?」と言い出す始末。そのイタリア男の口説き文句に対し、美しい女性は何故か私に向かって「マタ、コンドネ(また今度ね)」と日本語で答えました。何と言ったのかわからずにポカンとしているイタリア男と、「わぁ、日本語も喋れるんだぁ」と感心している日本人(私のことです)を残し、その美しい女性はうふふっと軽い笑みを浮かべ立ち去っていきました。結局、30分間全てをその女性に使ってしまい、しかも決められたトピックについては何の答も得ていないという状態だったのですが、そのイタリア男は、そんなことは全く気にするそぶりも見せず、軽くスポーツをしていい汗をかいたかのようなスッキリした顔をしていました。
 一般的にイタリア人男性は「女性に対して積極的にアプローチする」といったイメージは持っていたのですが、それはあくまで映画やドラマの中に出てくるステレオタイプとしてのイタリア人がそのように描かれているだけであって、実際は違うんじゃないか、とアメリカに来る前は想像していたのですが、まさかこんなにベタなイタリア人が実際に存在するなんて、驚きでした。おそらく、彼にしてみれば何も特別のことをしたわけでなく、日本人から見たら「チャラ男」的な言動も、イタリア人としてはごく普通の標準的なものなのでしょう。逆に、そのイタリア男は私を見て「やっぱり日本人っておとなし過ぎるな」と思っていたのかもしれません ^^;)